医療現場発のものづくりIVRの治療現場で活躍する『足操作マウス』を開発・製品化

2016年1月20日

静岡県立静岡がんセンター
公益財団法人 静岡県産業振興財団 ファルマバレーセンター
株式会社ビー・アライブ

 静岡がんセンターでは、がん治療レベルの向上のため、医師や看護師が医療現場で必要とされる医療器具やケア用品などのアイデアをファルマバレーセンターを通じて企業と共同研究を行い、製品化されたものを実際の医療現場で使用するという取り組みを行っています。

 静岡がんセンターのIVR※1科および株式会社ビー・アライブ(代表取締役 長島秀明、本社:静岡県三島市)は、昨年2月、足の動作でパソコンを操作する『足操作マウス(通称、フットマウス)』の試作品を共同開発いたしました。IVRでは、体内に針や細い管(カテーテル)を血管や肝臓などの臓器に誘導して治療を行うため、開腹する必要がないことから低侵襲の治療法として質の高いがん医療には必須の技術となっています。その際、事前に撮影したCTやX線画像を電子カルテ画面で確認しながら、針やカテーテルの先端の位置を把握して治療を進めていきますが、数十枚の画像から見たい画像を他のスタッフへ口頭で指示をしながら探し出すため、思うように探し出せないストレスがかかっていました。今回開発した『足操作マウス』は、両手がふさがっている状況下においても足でパソコンを操作することができるため、画像を次々とめくることができ、見たい画像を思うように選び出すことが出来ます。

 当初、この『足操作マウス』は上記のような医療現場を想定して開発されましたが、上肢の障害者や筋萎縮の患者さんなど多くのケースに利用できる可能性があるとして、ビー・アライブは、クラウドファンディングを活用し、さらにIVR科医師の意見も反映させて、改良版の足操作マウスを開発いたしました。改良版は、足で操作することを更に容易にしたいという点で下記の特徴があります。

1. 配線コードがない(ワイヤレス)ため、設置場所を選ばない。
2. 特殊なキャスターを採用することでキャスターの無駄な動きを制御したことと、マウス中央のペダルを踏み込んでマウスを動かすようにしたことで、マウスに足を束縛されることから解放された。
3. クリックボタンの配置と大きさを工夫。頻繁に使用する左クリックボタンを中央全面に大きく配置することで、ブラインドでのクリックを実現。その他のボタンはブラインドタッチで認識できるようにボタンの高さに差をつけた。
4. 本体は洗浄可能なステンレスボディー。

 今後、手に障害を持っている方が足でのパソコン操作をサポートすることや、手の運動機能の機能回復を補助する道具として普及されることを期待しています。

※1 IVRはインターベンショナル・ラジオロジー(Interventional Radiology)の略で、X線透視・超音波・CTなどの各種の画像診断技術を応用し、これらの画像を見ながら体内に細い管(カテーテル)を入れたり、針を刺したりして行う治療行為であり、放射線医学の一分野です。日本語で表現する場合は「画像下治療」「放射線診断技術の治療的応用」、「血管内治療」といった名称が使われることがあります。

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IVR 治療の様子(左写真)と血管の中に入るカテーテルを確認するための血管造影画像(右写真)。
治療中、両手は清潔を保つため、画像が表示されるコンピュータのマウスを操作できないことから
今回の機器開発が進められました。
【製品概要】

1. 名称:足操作マウス(通称:フットマウス)
2. 主な仕様

① 手術室内で使用可能(防汚性、防水性)。
② 専用ドライバソフトは不要。医療機器に付随するパソコンに標準搭載のドライバソフトにより足操作マウスを動かすことができる。
③ 片足の足の裏と指で操作が可能。
④ ワイヤレス対応。
⑤ 市販のマウス(3ボタンタイプ)と同様の機能をもち、左クリック、右クリック、スクロール操作が可能。
⑥ 全てのパソコンに標準装備されているスクリーンキーボードを使用することで、キー入力が可能。

3. 販売元:株式会社ビー・アライブ

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一般のマウス(左)と足操作マウス(フットマウス)(右)の機能の比較

[プロファイル]
●静岡県立静岡がんセンター:2002年9月に開院、陽子線治療、手術支援ロボット・ダヴィンチなどの高度な先進医療を提供するがんの専門医療機関。2013年4月より特定機能病院。現在、緩和ケア病棟50床含め総ベッド数611床。最先端の治療から心のケアまで全人的な治療を行っており、患者さんに寄り添った医療を目指しています。また、がん診療レベル向上のため、医療現場で必要とされるケア用品や医療器具のアイデアを募集し、ファルマバレーセンターを通じて企業と研究開発したものを製品化する取り組みを行っています。

●ファルマバレーセンター:静岡県東部を中心に医療・健康産業の振興と集積を図るファルマバレープロジェクトを推進するため2003年4月に設置された県の支援機関。①健康基盤づくり、②ものづくり、③ひとづくり、④まちづくりの視点で各プロジェクトを推進しています。ものづくりの分野では、企業の新機種開発、橋渡し研究そして医療者や患者がベッドサイドで必要とする臨床現場発のアイデアを積極的に取り入れたものを製品化する支援をしています。

●株式会社ビー・アライブ:2008年創業。3次元CADによる機械設計開発と独自のネットワークにより、ロボット開発~食品・自動車部品製造ラインまでの多分野にわたる機械製造を行っています。2011年よりファルマバレープロジェクトに参加。医療関連産業に開発メーカーとして参画しています。

●NHK WORLD 掲載サイト
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/videos/20160223103749264/

プレスリリースはこちら → ico_pdf (PDFファイル:250KB)

Press Release in English → ico_pdf (PDF File:310KB)

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※本件に関するお問い合わせは、下記までお願いいたします。
静岡 県立静岡がんセンター マネジメントセンター 医療広報担当  TEL 055(989)5222

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