超小型ICタグを使った病理検体管理システムを企業と共同開発

2014年4月30日
静岡県立静岡がんセンター
公益財団法人 静岡県産業振興財団 ファルマバレーセンター

静岡県立静岡がんセンター(総長:山口建)は、静岡県の推進するファルマバレープロジェクトのもと、2007年、スターエンジニアリング株式会社(社長:代表取締役 星哲哉、本社:茨城県日立市)と共同研究契約を締結し、この度、個体識別管理ツールとして「ICタグを使った病理検体管理システム」を共同開発しました。患者さんの血液や細胞などの検体管理、あるいは検体を加工し標本化する作業は、確実な個体識別と効率的な管理システムが求められています。このシステムは、病理検体管理において、他の検体と取り違える人為的なミスを防ぐことを目的に開発されました。

病理検体を取り扱う病理診断は、がんの確定診断のために重要なステップです。組織の細胞を顕微鏡で観察するため標本化しますが、この作業は検体を別の容器や形状に移しかえながら行うため、その工程は単純ではありません。検体を固定させるためにホルマリン液に浸す、検体を薄い組織片に切れるようパラフィン包埋(包み込む)しブロック化、薄切、薄切切片回収、脱パラフィン操作と染色等の工程を経て、病理組織標本が作られます。このような作業工程のため、ICタグは有機溶剤や加熱にも耐えうる材質のもので、かつ、ICタグの情報を受け取れる検出装置、ソフトウェアがそろったシステムが必要でした。本病理検体管理システムは、ホルマリン・エタノール・クロロホルム等の有機溶剤の浸漬や煮沸にも耐えうるICタグで、最初の検体受け渡し時に、病理診断オーダー番号等と患者情報はICタグに書き込まれ、ICタグは常に検体と共に移しかえられていきます。有機溶剤やパラフィンに浸漬された状態であってもICタグ情報の読み取り・書き込み・照合判定が可能です。検体受理時の検査依頼書と、検体と同一容器に入れられたICタグの情報は、各工程で照合され、不照合時には音や振動、文字表示で通知されることで、これまでの目視確認以上の管理レベルを達成することができるようになります。本システムにより、標本作製全工程のおよそ半分の作業までは、検体は常に患者情報とひも付けられ、検体取違えなどのミスを未然に防ぐことができます。

なお、本システムの共同開発に係る研究は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「SBIR技術革新事業」(2011―2012年度)に採択され、電子カルテとの連動する検体管理システムの構築、ICタグに求められる耐薬品性の試験や性能評価、システム全体の運用評価等を行い、2013年12月に完成いたしました。

【病理検体管理システムの構成】

  1. システム#1: ICタグ、リーダーライター(据置型ICタグ読み取り・書き込み装置)、タブレット型パソコン、バーコードリーダー(病理検査依頼書確認用)、病理検体管理ソフトウェア

  2. システム#2: ICタグ、リーダーライター(バーコードリーダー機能付きハンディタイプICタグ読み取り・書き込み装置)、病理検体管理ソフトウェア

<開発したICタグの特徴>

  1. 耐薬品製(ホルマリン、エタノール、キシレン、クロロホルム等)

  2. 小型サイズ 縦5㎜X横5㎜X厚み2㎜

  3. メモリー容量 112バイト

  4. 病理環境に適した通信周波数13.56MHz(検体採取、切り出し、固定、脱水、脱脂、包埋の各工程に対応)

<病理組織標本の作製工程>

本プレスリリースPDFはこちら → ico_pdf (PDFファイル:309KB)

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※本件に関するお問い合わせは、下記までお願いいたします。
静岡 県立静岡がんセンター マネジメントセンター 医療広報担当  TEL 055(989)5222

スターエンジニアリング株式会社 設計・開発部 TEL 0294(38)1212

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