研究成果発表 香り豊かな療養環境はがん細胞増殖を抑制する

研究成果を発表
~香り豊かな療養環境はがん細胞増殖を抑制する~

静岡がんセンターでは、患者さんの療養環境の改善に積極的に取り組んでいます。その中で、病気に伴って生じる不愉快な臭い(病臭)を和らげる研究を推進している静岡がんセンター研究所 地域資源研究部では、この度、マウスを用いた動物実験によって、ヒノキやマツなど多くの針葉樹に含まれ、マウスが好むとされるα-ピネンを用いた香り豊かな療養環境が、がんの増殖を抑えることができたという研究を『Biomedical Research 2012年2月号』に発表しました。

【研究概要】

ストレスは、精神面への影響のみならず、身体的な健康に対しても有害であると考えられている。しかし、ストレスと疾患の関連を証明することは難しい点が多い。最近、enriched environment(輪車や梯子など感覚・運動刺激の豊富な環境)で飼育したマウスでは、癌の増殖が抑制されることが報告された。この報告では、そのメカニズムとして視床下部‐下垂体‐副腎ホルモン(ノルアドレナリンやコルチゾン)の上昇、レプチンの低下、免疫系の活性化等が関与することが示された。

今回我々は、豊かな環境の一つとしての香りの環境がマウス移植腫瘍の増殖に影響するか検討した。香りの環境として、森林浴などで代表的な芳香成分であるα―ピネンを用いた。1日5時間α-ピネンの環境で飼育したマウスでは、移植した腫瘍(マウス黒色腫細胞)の大きさが約40%抑制されたことが明らかになった。

一方、培養黒色腫細胞にα-ピネンを添加しても細胞の増殖に影響しなかった。このことは香りの環境における腫瘍増殖抑制効果は、α-ピネンの直接効果ではなかったことを示唆した。

これらの結果より、今後、香り豊かな環境が、患者さんのがんの増殖に及ぼす影響についての研究が必要であると考えられた。

静岡がんセンター研究所 地域資源研究部 部長 楠原正俊医師のコメント

がん患者さんでは、時に強い病臭(がんに伴う悪臭)を認めることがあり、患者のみならず、家族にとっても、精神的に負担になります。静岡がんセンターでは、病臭の原因成分の同定、病臭消臭法の開発など積極的に病臭対策を進めてきました。今回の結果は、香り豊かな環境が、がんの治療効果にどのような影響を与えるかを積極的に研究する必要性を示していると考えられます。今後、このメカニズムを解明するとともに、他の香りでも同様な効果が得られるか、他のがん種でも同様の効果が認められるのか、そして最終的に療養環境の改善が患者さんに好影響を与えるのか について検討を進めたいと考えています。
※『Biomedical Research』誌の概要については、下記サイトをご覧下さい。
1980年創刊 隔月発行、医学生物系の広い範囲をカバーする英文誌。
http://www.jstage.jst.go.jp/browse/biomedres/_contpdf/-char/ja/

提供日 2012年2月14日
担 当 がんセンター局 県立静岡がんセンター
連絡先 静岡がんセンター研究所地域資源研究部 楠原
マネジメントセンター 丸茂 TEL 055(989)5222(代表) (内線4314)

 

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