抗体医薬の作製を効率的に進めるため、静岡がんセンターとカイオム・バイオサイエンスが包括的共同研究協定を締結

抗体医薬(※1)の作製を効率的に進めるため、
静岡がんセンターとカイオム・バイオサイエンスが
包括的共同研究協定を締結

静岡県立静岡がんセンター(静岡県駿東郡長泉町:総長 山口 建、以下静岡がんセンター)と株式会社カイオム・バイオサイエンス(東京都新宿区:代表取締役社長 藤原正明、以下カイオム社)は、平成24年2月1日付で包括的共同研究協定を締結いたしました。この締結により、静岡がんセンターとカイオム社は、がん治療に臨床応用できる抗体医薬の作製をさらに効率的に進めることが可能となり、将来、がん患者の皆様が安全かつ安価で有効な抗体医薬品を利用できるようになると考えています。

静岡がんセンター研究所では、数年前よりがんの治療に臨床応用できる抗体医薬を作製することを目指した基盤技術を開発してきました。これまでにさまざまな試料から統合オミクス技術を用いて抗体の標的となる多くのタンパク質を見出していますが、網羅的に抗体を作製する技術はまだ十分ではありませんでした。今回の締結により、静岡がんセンターで新しく見いだされた標的タンパク質に対する抗体は、カイオム社の技術を利用して短期間に作製され、静岡がんセンターで実施する腫瘍に対する効果や安全性を確認する試験に供給されることになります。そのため、抗体医薬の創薬研究の早期のプロセスを極めて効率的に進めることが可能となり、将来、臨床応用の可能性を持った有用なシーズ抗体を数多く見出すことができると期待しています。
なお、静岡がんセンターでは、別途、ヒト型のモノクローナル抗体を短期間に、また、安価に作製する技術を開発しています。今回の共同研究によって、がん治療に有効なシーズ抗体を見つけることができれば、がんの患者さんに応用可能な抗体医薬を容易に作製することが期待されます。

一方、カイオム社は、静岡がんセンターの保有する複数の標的膜タンパク質・分泌タンパク質等に対してADLibR (Autonomously Diversifying Library:自律多様化ライブラリー)システム(※2)による抗体作製を共同で実施し、癌の診断・治療を目的とした研究において有用なシーズ抗体を迅速に提供することができます。今回の締結は、互いの強みを補完する理想的な取り組みと考えており、本共同研究が将来、新たな診断および治療を待ち望む人々のために、日本発の画期的な抗体医薬の創生に繋がるものと期待しています。さらに、静岡がんセンターを始めとするがんに関する基礎から臨床までの研究を総合的に行っている研究機関とのアライアンスを構築・継続し、有用なシーズ抗体を作製するとともに、事業化に向けた取り組みの充実を図っていきたいと考えています。
※1 「抗体医薬」とは
抗体医薬とは、抗体が抗原を認識する特異性を利用して治療に用いる医薬品です。

※2 「ADLibRシステム」について
ニワトリDT40 細胞の抗体遺伝子の組換え活性化によって抗体を作製する技術です。この技術の特徴として、生体外で10 日程度という短期間で抗体を作製することが可能になります。理論的には無限の多様性のある抗体を作製でき、従来困難と考えられていた抗原に対する抗体を作製することも可能です。既にカイオム社では、標的抗原を発現させた動物細胞を用いた新規の抗体スクリーニング法により、4回膜貫通型タンパク質に対する高い特異性を示すモノクローナル抗体の作製に成功しております(http://www.chiome.co.jp/info/pdf/prs20091002.pdf)。なお、ADLibRは株式会社カイオム・バイオサイエンスの登録商標です。

静岡がんセンター 免疫治療研究部 部長 秋山靖人のコメント

現在まで多くの抗体医薬が開発され、自己免疫疾患やがんの治療に応用されています。特にがん治療の分野では、抗体医薬品としてハーセプチンなどの成功例はありますが、抗体医薬の供給体制が十分であるとは言えません。しかも、抗体製造にかかるコストが高く、がんの治療薬としては高い薬価が欠点の1つにもなっています。さらに、これまで日本発の抗体医薬品の開発は少なく、欧米の技術レベルに追い付くためにも抗体医薬の研究開発の促進が強く望まれます。今回のカイオム社との共同研究の締結は、互いの優れた技術を提供し合うことにより、より理想的なアライアンスを構築しうる非常に良い機会になると考えております。このパートナーシップが将来的に日本発の抗体医薬品の開発に繋がり、これらの課題の解決に向けた新しい取り組みの端緒となり得ると確信しております。
静岡がんセンターでは、今後ファルマバレープロジェクトの力強いサポートの下、抗体医薬に関する基礎研究及び臨床応用への体制を充実させ、がん患者の皆様が将来有効で安全かつ安価な抗体医薬を利用できるよう努力を続けていきたいと考えております。

株式会社カイオム・バイオサイエンス 代表取締役社長 藤原正明のコメント

カイオムは2005年の設立以来、ニワトリDT40細胞を利用した独自の抗体作製技術、ADLibRシステムの開発・改良により事業化を図ってきました。ADLibRシステムの持つ抗体作製の速さ、多様性の大きさ、動物に対する免疫を使わないことによる幅広い抗原に対する適応性等を最大の特徴に、これまで困難とされていた抗原に対しての抗体作製にも成功しております。また、昨年末より新たにマウスキメラ抗体を産生するキメラライブラリも稼働させ、医薬候補としての抗体探索を一層スピードアップするものと確信しております。今回の共同研究契約の締結により、静岡がんセンターで新たに見いだされた標的タンパク質に対する抗体をカイオムの技術で迅速に作製することが可能になります。これにより、がん治療の分野で画期的な抗体医薬を創生し、新たな治療薬を待ち望むがん患者の皆様に最適な治療薬としてお届けできるよう努力していく所存です。

静岡県立静岡がんセンター

静岡がんセンターは、2002年9月に開院し、陽子線治療、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」等の高度な先進医療を提供する世界トップレベルのがん治療専門医療機関であり、健康産業の振興をねらった静岡県のファルマバレープロジェクト(※1)推進の中核施設として積極的に産学官連携を進めています。静岡がんセンター研究所は2005年に開所し、統合オミクスのプラットホームを整備し、がん早期発見のための研究開発に力を注いでいます。
※1 「ファルマバレープロジェクト」について
医療産業からウエルネスまで幅広い分野にわたり、世界レベルの研究開発を進め、臨床応用を図り、その成果により富士山麓に健康関連産業の集積を図り、特色ある地域の発展を目指すものです。

株式会社カイオム・バイオサイエンス

カイオム・バイオサイエンスは、抗体とその作製技術の開発に特化した日本発のバイオテクノロジー企業で、理化学研究所で開発されたユニークな抗体作製基盤技術であるADLibRシステムを基に実用化に向けた抗体作製と技術開発を行ってきました。2008年からは、国内外の複数の大手医薬企業や大手診断薬企業との共同研究及び抗体作製を実施しております。当社は、この技術の価値を最大化するためにパートナーに対し、非独占的実施権を供与することにより、医薬・診断薬開発に多大な貢献をいたします。

本件のお問い合わせ先

静岡県立静岡がんセンター マネジメントセンター 医療広報担当 丸茂

〒411-8777 静岡県駿東郡長泉町下長窪1007番地
電話 055(989)5222 FAX 055(989)5793
ホームページ http://www.scchr.jp/

株式会社カイオム・バイオサイエンス

取締役経営管理部 シニアディレクター 清田 圭一
〒162-0843 東京都新宿区市谷田町二丁目6番4号
電話:03(5206)7401
ホームページ  http://www.chiome.co.jp/

提供日 2012年2月7日
担 当 がんセンター局 県立静岡がんセンター
連絡先 マネジメントセンター 丸茂 TEL 055(989)5222(代表) (内線4314)

 

お問い合わせ
企画広報部知事公室広報課
静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054(221)2265
ファックス番号:054(254)4032
メール:PR@pref.shizuoka.lg.jp

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