がん患者さんと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)Q&A集
更新日:2025年3月17日
がん患者さんの新型コロナウイルスワクチン(以下、「ワクチン」)の接種について、患者の皆様から病院に対してさまざまなご質問をいただいています。現在わかっていることや当院の方針について、Q&Aで示します。
総論編
Q1. がん患者さんは新型コロナウイルス感染症にかかると命にかかわりますか?
ワクチンや治療薬ができたこと、変異株の特性により重症化リスクが初期より下がっています。がん患者さんの中でも血液がんや化学療法中、肺疾患や心疾患など合併症がある、全身状態(Performance Status)が悪い、高齢である方は重症化リスクがあります。重症化予防効果は半年から1年で低下します。定期的なワクチン接種を行うことをお勧めします。ワクチン未接種でリスクが高い患者さんは重症化予防の抗ウイルス薬使用もお勧めします。
Q2.コロナウイルスワクチンは静岡がんセンターで接種ができますか?
当院でも接種は可能ですが、接種券が使えない市町村もあり、お住いの自治体にお問い合わせください。
Q3.インフルエンザワクチンも打った方がよいでしょうか?
インフルエンザも新型コロナウイルスと同様の呼吸器ウイルスで、例年冬に流行します。インフルエンザにかかるとその後に細菌性肺炎を合併しやすくなります。ワクチンは重症化を予防する効果があり、がん治療中の方にも有効です。コロナウイルスワクチンと同時接種が可能です。それぞれのワクチンの接種間隔についても制限はありません。当院でも接種は可能ですが、接種券が使えない市町村もあり、お住いの自治体にお問い合わせください。
各論編
Q4)がんのために手術を受ける予定です。ワクチン接種はどうしたらよいですか?
手術を受ける場合、発熱で手術が延期することを避けるため、手術の1週間前はワクチン接種を避けることをお勧めしています。
なお、生命にかかわる緊急手術の場合、ワクチン接種のスケジュールと関係なく手術を受ける必要があります。
Q5)がん治療のため薬物療法(抗がん剤治療など)を受けています。ワクチンを打ってもよいですか?
下記の薬物による治療中であっても、原則、ワクチンを接種できます。ただし、接種のタイミングには注意を要する薬物もあります。あらかじめ担当医にご確認ください。
1、抗がん剤(細胞障害性抗腫瘍薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬):ワクチン接種は原則可能ですが、できれば以下の日は避けましょう。
・治療日の 前後2、3 日以内(ワクチンの副反応として発熱やアナフィラキシーを生ずる場合があるため)
・治療日(制吐薬のデキサートなどによってワクチンの効果が減弱する可能性があるため)
・骨髄抑制が最も強い時期(白血球減少によるワクチン効果の減弱や 血小板減少による血腫形成のリスクを避けるため)
経口抗がん剤を毎日内服している場合、基本的に接種できますが、あらかじめ担当医にご確認ください。
2、ホルモン剤:ワクチン接種を避けるべきタイミングは特にありません。
Q6)がん治療のためステロイド(副腎皮質ホルモン)剤や免疫抑制薬を使っています。ワクチンを打ってもよいですか?
ステロイド剤や免疫抑制薬使用中であっても、原則、ワクチン接種は可能です。ただし、一部の薬(トシリズマブ[関節リウマチなどの治療薬、商品名アクテムラ]、リツキシマブ[リンパ腫、慢性リンパ性白血病などの治療薬、商品名リツキサン]、高用量シクロホスファミド[造血幹細胞移植のための前治療など、商品名エンドキサン])では、接種のタイミングを調整することが望ましい場合がありますので、該当する場合は担当医にご相談ください。
Q7)造血幹細胞移植を受けました。ワクチンを打ってもよいですか?
造血幹細胞移植後の場合、不活化ワクチン接種開始のタイミングとして適切とされる移植後3ヶ月~6ヶ月以降の接種をお勧めします。
Q8)がんのために放射線治療を受けています。ワクチンを打ってもよいですか?
放射線治療中であっても、ワクチン接種自体には制限はなく、接種は可能です。ただし、接種後の副反応として熱や倦怠感がでることがありますので、放射線治療への影響が少ない日程で接種することを考慮するとよいでしょう。
Q9)ワクチン接種とがん治療の効果判定(CT、PET-CTなど)
ワクチンの接種後には、副反応のために、接種した側の脇の下や首のリンパ節(リンパ腺)が腫れて、がんのリンパ節転移と紛らわしいことがあります。いつワクチン接種をしたか担当医に伝えていただくとともに、CTやPET-CTを撮る場合には、可能であれば接種後4~6週の間隔をあけてこれらの検査を行うことを考慮するとよいでしょう。