がん患者さんの新型コロナウイルスワクチン接種に関する Q & A

更新日:2021年5月7日

新型コロナウイルスに対するワクチンの接種が開始されました。患者の皆様から、病院に対してさまざまなご質問をいただいています。ここでは、がん患者さんの新型コロナウイルスワクチン(以下、ワクチンと略)の接種について、現在わかっていることや当院の方針について、Q and A で示します。

総論編

Q1)がんのために病院にかかっていますが、ワクチンをうってよいですか?

がんのために病院に受診していても、ほとんどの方はワクチンを接種できます。ワクチンを接種すると、たとえ新型コロナウイルスに感染しても症状が出ることを防ぎ、重症化を予防する効果があります。また、最近の研究では、ワクチンが新型コロナウイルスに感染すること自体を防ぐ可能性も示されています。従って、原則接種することをお勧めします。

ただし、現にがんの治療中の方は、各論に示すように接種のタイミングを調整する方がよい場合もありますので、あらかじめ担当医に接種の可否や時期についてご確認ください。

注)以下の人はワクチン接種を受けられません:37.5度以上に発熱している人、重い急性疾患にかかっている人、ワクチンの成分(ポリエチレングリコール)に対してアナフィラキシーなどの重度の過敏症の既往歴がある人


Q2)静岡がんセンターでワクチンをうってくれますか?

ワクチンの接種は、「原則として、住民票所在地の市町村の医療機関や接種会場で受ける」ことになっています。そのため、当院ではなく、基本的には市町村からの案内に従って接種を受けてください。詳細は厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00218.html)でもご確認ください。

なお、同ホームページには、入院中や基礎疾患で治療中の場合には、「住民票所在地以外でワクチンを受けていただくことができる見込みです。具体的な手続きは、今後案内します。」と書かれていますが、2021年5月6日現在、その具体的手続きはまだ示されていません。


Q3)ワクチンの副反応にはどのようなものがありますか?

ワクチン接種後に起こるかもしれない代表的な症状には、以下のようなものがあります。

症状 出現時期
注射した部位の腫れや痛み 当日出現し2日程度続く
発熱、寒気、倦怠感 多くは翌日から始まり1日程度続く
筋肉痛、関節痛 多くは翌日から始まり、1日程度続く
頭痛 多くは翌日から始まり1日程度続く

また、強いアレルギー反応として、発生頻度は低いもののアナフィラキシーを起こすことがあります。その症状は、皮膚のかゆみや発赤、蕁麻疹の出現、くしゃみ、のどのかゆみ、声のかすれ、息苦しさ、腹痛、吐き気、物が見えにくい、などです。接種直後から30分以内にこのような症状が現れた場合は、直ちに接種会場の医師や看護師に伝えてください。

一般的には、アナフィラキシーが起きる場合は初回の接種時に多いと言われています。また、発熱、倦怠感、頭痛などの症状は、2回目の接種後に多いことがわかっています。

 

各論編

Q4)がんのために手術を受ける予定です。ワクチン接種はどうしたらよいですか?

手術を受ける場合、静岡がんセンターでは、手術の1週間前から手術後2週間までの間はワクチン接種を避けることをお勧めしています。これは、ワクチン接種後、特に2回目の接種後には約15%の頻度で熱がでるからです。

なお、生命にかかわる緊急手術の場合、ワクチン接種のスケジュールと関係なく手術を受ける必要があります。


Q5)がん治療のため薬物療法(抗がん剤治療など)を受けています。ワクチンを打ってもよいですか?

下記の薬物による治療中であっても、原則、ワクチンを接種できます。ただし、接種のタイミングには注意を要する薬物もあります。あらかじめ担当医にご確認ください。

  1. 抗がん剤(細胞障害性抗腫瘍薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬):ワクチン接種は原則可能ですが、できれば以下の日は避けましょう。
    • 治療日の 前後2、3 日以内(ワクチンの副反応として発熱やアナフィラキシーを生ずる場合があるため)
    • 治療日(制吐薬のデキサートなどによってワクチンの効果が減弱する可能性があるため)
    • 骨髄抑制が最も強い時期(白血球減少によるワクチン効果の減弱や 血小板減少による血腫形成のリスクを避けるため)
    • 経口抗がん剤を毎日内服している場合、基本的に接種できますが、あらかじめ担当医にご確認ください。
  2. ホルモン剤:ワクチン接種を避けるべきタイミングは特にありません。

Q6)がん治療のためステロイド(副腎皮質ホルモン)剤や免疫抑制薬を使っています。ワクチンを打ってもよいですか?

ステロイド剤や免疫抑制薬使用中であっても、原則、ワクチン接種は可能です。ただし、一部の薬(トシリズマブ[関節リウマチなどの治療薬、商品名アクテムラ]、リツキシマブ[リンパ腫、慢性リンパ性白血病などの治療薬、商品名リツキサン]、高用量シクロホスファミド[造血幹細胞移植のための前治療など、商品名エンドキサン])では、接種のタイミングを調整することが望ましい場合がありますので、該当する場合は担当医にご相談ください。


Q7)造血幹細胞移植を受けました。ワクチンを打ってもよいですか?

造血幹細胞移植後の場合、不活化ワクチン接種開始のタイミングとして適切とされる移植後3ヶ月~6ヶ月以降の接種をお勧めします。


Q8)がんのために放射線治療を受けています。ワクチンを打ってもよいですか?

放射線治療中であっても、ワクチン接種自体には制限はなく、接種は可能です。ただし、特に2回目の接種後には副反応として熱や倦怠感がでることがありますので、放射線治療への影響が少ない日程で接種することを考慮するとよいでしょう。


Q9)ワクチン接種とがん治療の効果判定(CT、PET-CTなど)

ワクチンの接種後には、副反応のために、接種した側の脇の下や首のリンパ節(リンパ腺)が腫れて、がんのリンパ節転移と紛らわしいことがあります。いつワクチン接種をしたか担当医に伝えていただくとともに、CTやPET-CTを撮る場合には、可能であれば接種後4~6週の間隔をあけてこれらの検査を行うことを考慮するとよいでしょう。

カテゴリー

カテゴリー