【掲載論文】進行・再発子宮頸がんに対するアテゾリズマブ、ベバシズマブ、およびプラチナ併用化学療法の有効性と安全性:BEATcc試験における日本人データ

2025年10月3日
婦人科部長 武隈 宗孝

 子宮頸がんは、手術や放射線治療では治らず、体の他の場所に広がってしまった場合、抗がん剤による治療が中心となります。従来は、白金系と呼ばれる抗がん剤に「パクリタキセル」という薬を組み合わせ、さらに血管の新しい成長を抑える「ベバシズマブ」を加える治療が標準でした。しかし、この治療でも効果には限界があり、より良い結果が期待できる新しい組み合わせが求められてきました。
 今回、国際共同試験として行われたBEATcc試験に参加した日本人患者56人のデータを用いて、従来の治療に加えて「アテゾリズマブ」という免疫療法薬を追加した場合の効果と安全性が検討されました。アテゾリズマブは、がん細胞が免疫の攻撃から逃れる仕組みを解除し、自分の体の免疫が再びがんを攻撃できるようにする薬です。
 その結果、免疫療法を追加したグループでは、がんが進行せずに抑えられる期間や生存期間が長くなる傾向が見られました。特に、がんの効果が持続する期間が大幅に延びたことが注目されます。副作用については従来治療と大きな違いはなく、多くは対応可能なものでしたが、一部で治療を中断せざるを得ない例もありました。
 この研究は人数が少ないため最終的な結論を出すには慎重さが必要ですが、免疫療法の追加が日本人においても有望であることを示した重要な成果です。今後、この治療が新しい標準治療として広く使われる可能性が期待されています。

掲載論文概要

雑誌名 Journal of Gynecologic Oncology. 2025 May 19. doi: 10.3802/jgo.2025.36.e116.
タイトル Atezolizumab, bevacizumab, and platinum chemotherapy in cervical cancer: results of Japanese population from BEATcc
進行・再発子宮頸がんに対するアテゾリズマブ、ベバシズマブ、およびプラチナ併用化学療法の有効性と安全性:BEATcc試験における日本人データ
平易な研究名称 日本人における進行・再発子宮頸がんにおけるアテゾリズマブの有効性と安全性
筆頭著者 武隈宗孝(静岡県立静岡がんセンター 婦人科)
責任著者 武隈宗孝(静岡県立静岡がんセンター 婦人科)
著者 Munetaka Takekuma, Shin Nishio, Satoshi Yamaguchi, Mayu Yunokawa, Hiroshi Nishio, Koji Nishino, Akira Kurosaki, Shinichiro Minobe, Guillermo Villacampa, Ana Oaknin, Aikou Okamoto
共同著者の所属施設 静岡県立静岡がんセンター 婦人科
久留米大学 産婦人科
兵庫県立がんセンター 婦人科
がん研有明病院 婦人科
慶應義塾大学病院 産婦人科
新潟大学医歯学総合病院 産科婦人科
埼玉医科大学国際医療センター 婦人科腫瘍科
北海道がんセンター 婦人科
Oncology Data Science, Vall d’Hebron Institute of Oncology and SOLTI Breast Cancer Research Group
Medical Oncology Service, Vall d’Hebron Institute of Oncology, Vall d’Hebron Barcelona Hospital Campus
東京慈恵会医科大学 産婦人科
掲載日 2025年5月19日
URL https://doi.org/10.3802/jgo.2025.36.e116

 

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