【掲載論文】腹腔洗浄細胞診陽性または限局性腹膜転移を有する胃がんでは、手術と化学療法を組み合わせた治療が良好な生存成績と関連―本邦の胃がん専門48施設による共同研究―

2026年10月27日 
胃外科部長 坂東悦郎
藤谷啓一(筆頭著者)

1.なぜ治療方法の検討が重要なのか?

胃がんでは、おなかの中の洗浄液からがん細胞が見つかる「腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)」や、腹膜への転移が限られた範囲に認められる「限局性腹膜転移(P1a)」という状態があります。これらは、胃がんの中でも良好な長期生存を得ることが難しい病態であり、治療成績の改善が求められています。このような患者さんに対して、手術または抗がん剤治療を単独で行うのか、両者を組み合わせるのか、また組み合わせる場合にはどの順番で行うのがよいのかについては、十分に明らかになっていません。

2.研究の方法

胃がん診療を専門とする日本全国48施設で、2016~2022年に治療を受けた、CY1またはP1aを有し、その他の遠隔転移がない胃がん患者1,181人の診療情報を調べました。次の4つの治療方法について、生存成績を比較しました。

  1. 胃切除後に化学療法:胃がんを手術で切除した後に、抗がん剤治療(化学療法)を行う方法
  2. 化学療法後に胃切除:まず抗がん剤治療を行い、その後に胃がんを手術で切除する方法
  3. 胃切除のみ:化学療法を組み合わせず、胃切除のみを行う方法
  4. 化学療法のみ:胃切除を行わず、抗がん剤治療のみを行う方法

3.研究の主な結果

4.まとめと今後の展望

本研究から、手術と化学療法を組み合わせる治療、特に化学療法がよく効き、腹膜転移がみられなくなり、おなかの中の洗浄液からもがん細胞がみつからなくなった後に胃切除を行う治療が、長期生存につながる可能性が示されました。

ただし、本研究は過去の診療情報を調べた観察研究であり、患者さんの病状や治療への反応の違いが結果に影響している可能性があります。そのため、手術と化学療法のどちらを先に行うべきかを断定することはできません。今後は、どのような患者さんに、どのタイミングで手術や化学療法を行うことが適切かを、さらに検証していく必要があります。

 

▶掲載論文概要

雑誌名 JAMA Surgery. 2026 Oct 7. doi: 10.1001/jamasurg.2026.4647.
タイトル Treatment Outcomes for Gastric Cancer With Positive Peritoneal Lavage Cytology or Localized Peritoneal Metastasis
腹腔洗浄細胞診陽性または限局性腹膜転移を有する胃がんの治療成績
筆頭著者 Keiichi Fujiya 藤谷 啓一(静岡県立静岡がんセンター 胃外科)
責任著者 Masanori Tokunaga 徳永 正則(国立がん研究センター中央病院 胃外科)
共同著者 Kazuyoshi Yamamoto 山本 和義(大阪国際がんセンター 消化器外科)
Souya Nunobe 布部 創也(がん研究会 有明病院 消化器外科)
Yasuyuki Kawachi 河内 保之(長岡中央綜合病院 外科)
Yasuhiro Yuasa 湯浅 康弘(徳島赤十字病院 消化器外科)
Mikihiro Kano 加納 幹浩(広島市立北部医療センター安佐市民病院 消化器外科)
Yukinori Kurokawa 黒川 幸典(大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 消化器外科学)
Narikazu Boku 朴 成和(東京大学医科学研究所附属病院 腫瘍・総合内科)
Takaki Yoshikawa 吉川 貴己(横浜市立大学大学院医学研究科 消化管外科学)
掲載日 2026/10/7
URL https://jamanetwork.com/journals/jamasurgery/fullarticle/2854884
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42842264/

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