【掲載論文】食道がん手術における「胃管」の血流モニタリングに関する研究
2026年1月21日
食道外科部長 坪佐恭宏
食道がんの手術では、食道を切除した後に「胃」を細長く加工して胸の中に引き上げ、残った食道とつなぎ合わせる胃管再建という手術が一般的に行われます。この手術において最も注意が必要な合併症の一つが、つなぎ目から内容物が漏れてしまう縫合不全です 。今回の研究は、新しい測定機器を使ってこの合併症を防ぐための取り組みについて報告しています。
▶掲載論文
| 雑誌名 | Journal of Surgical Research Volume 318, February 2026, Pages 1-8 | |
| タイトル | Single-Arm Phase Ⅱ Study About a Tissue Oxygen Saturation Monitor in Gastric Tube Reconstruction | |
| 胸部食道切除例の胃管再建における組織酸素飽和度モニターによる酸素飽和度数測定の有用性に関する単群第II相試験 | ||
| (簡易名称)胃管再建における組織酸素モニターの有用性に関する研究 | ||
| 筆頭著者 | 石井賢二郎(静岡県立静岡がんセンター 食道外科/東邦大学医療センター 大橋病院外科) | |
| 共同著者と所属施設 | Yasuhiro Tsubosa | 静岡県立静岡がんセンター 食道外科 |
| Shuhei Mayanagi | 静岡県立静岡がんセンター 食道外科 | |
| Keita Mori | 臨床研究支援センター 統計解析室 | |
| Masazumi Inoue | 静岡県立静岡がんセンター 食道外科 | |
| Kazunori Tokizawa | 静岡県立静岡がんセンター 食道外科 | |
| Ryoma Haneda | 静岡県立静岡がんセンター 食道外科 | |
| 掲載日 | 2026年2月 | |
| URL | https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022480425008017?via%3Dihub(外部サイトにリンクします) | |
▶研究概要
1.なぜ血流の測定が重要なのか?
縫合不全が起こる大きな原因の一つは、新しく作った胃管の血流が不足することです 胃を加工して首元まで引き上げる際、血流が弱くなったり、引っ張られることで循環が悪くなったりすることがあります 。そのため、手術中にリアルタイムで血流の状態を客観的に確認する方法が求められていました。
2.新しい測定装置「toccare(トッカーレ)」
今回の研究では、日本で開発された「toccare(トッカーレ)」という装置が使用されました 。
- 特徴: 近赤外線という光を使って、組織の中の酸素飽和度(rSO2)を測定します 。
- メリット: 触れるだけで、組織の血流状態を、数値を伴うパーセンテージ(0〜99%)で、非侵襲的かつリアルタイムに測定できます。
3.研究の方法と結果
42名の患者さんの協力を得て、手術中に胃管の複数のポイントで酸素飽和度を測定しました。
- 主な結果:
- つなぎ目となる予定の場所で、目標としていた局所酸素飽和度の数値(45%以上)を維持できていた割合は83.3%でした。
- 実際に縫合不全が起こった患者さん(7名)では、胃管を引き上げた後の「一番先端の部分」の数値が、縫合不全が起きなかった人に比べて有意に低いことが分かりました。
- この結果から、この装置は手術中に胃管の血流不足を察知するための有効な指標になり得ることが示されました。
4.まとめと今後の展望
この研究により、新しい測定器を使って手術中に胃管の血流を数値化することは、十分に可能であることが証明されました。今後は、この装置で得られた数値をもとに、血流が悪い場合に手術の手順を追加・変更する、ことで、実際に縫合不全という合併症を減らせるかどうかを検証する、より大規模な調査が期待されています。


