【掲載論文】新規止血製剤(PuraStat®)の肺動脈切離断端滲出性出血に対する有効性と安全性を示唆

2025年11月28日
呼吸器外科部長 大出泰久
医長 勝又信哉

FASTOP試験(肺動脈自動縫合器切離後中枢側断端の滲出性出血に対するPuraStat®の有効性と安全性の検討)は、肺動脈自動縫合器切離後の中枢側断端滲出性出血に対するPuraStat®の有効性と安全性を検討することを目的に実施しました。肺癌手術では、肺動脈や肺静脈の切離に自動縫合器を使用することが多いです。自動縫合器による肺動脈切除後断端では、一定時間圧迫止血を行った後でも、約10%の肺動脈断端で持続性の滲出性出血が起こることが報告されています。このような場合、圧迫の継続やフィブリン糊やフィブリンシーラントパッチなどの特定の生物学的製剤がよく使用されますが、手術時間の延長や、ウイルス性疾患やプリオン病の伝染などの潜在的なリスクを伴うものもあります。合成止血剤で生物学的汚染のないPuraStat®は、消化管内視鏡治療中の滲出性出血を抑えるための吸収性局所止血剤として使用されていますが、胸部手術、特に肺動脈からの出血に対する止血剤としての使用を報告した研究はこれまでにありませんでした。今回の研究では、PuraStat®使用後、即時の追加止血治療を必要としたのはわずか4.35%(95%信頼区間、0~19.0%)であり、PuraStat®が有望な治療選択肢となる可能性を示唆しています。また、術後再出血イベントはなく、重篤な有害事象、および薬剤使用に関連する術中合併症や有害事象は認められませんでした。本研究の成果は、胸部外科だけでなく、消化器外科や頭頸部外科など、様々な臓器領域への応用が期待されます。

掲載論文概要

雑誌名 Surgery Today. 2025 Nov 14. doi: 10.1007
研究名称 Efficacy and safety of PuraStat® for exudative hemorrhaging at the pulmonary artery stump
肺動脈断端滲出性出血に対するPuraStat®の有効性と安全性
平易な研究名称 FASTOP試験
筆頭著者・責任著者 勝又信哉(静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科)
共同著者名と所属施設 Keigo Matsushima 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
Hayato Konno 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
Koki Maeda 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
Mitsuhiro Isaka 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
Hideaki Kojima 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
Kenta Murotani 久留米大学 バイオ統計センター
Miho Naito 久留米大学 臨床研究センター
Daisuke Yamaguchi 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
Momoko Asami 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
Tatsuya Masuda 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
Kazuki Hayasaka 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
Naoya Yokomakura 静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
Yasuhisa Ohde  静岡県立静岡がんセンター 呼吸器外科
掲載日 2025年11月14日
URL https://link.springer.com/article/10.1007/s00595-025-03168-x

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