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その他の症状

歩行時、階段昇降時等の身体を動かしたときの息切れ、息苦しさ、動悸

悩み

肺機能の低下で、運動や作業を持続することができず、焦っている。坂道や階段等は情けないほど息がきれ、病人だと自覚する。そのため旅行もできない。

助言

【呼吸の働きにあった生活をする】


肺は、体内に酸素をとりこみ体外に二酸化炭素をだす、つまり換気の働きをしています。肺切除により、換気をする面積が減少します。活動のエネルギーを作り出すには酸素が必要で、十分でないと息切れなどがみられます。
エネルギーの消耗を防いで、効率のよい呼吸を行い、残された呼吸の働きにあった生活をすることが大切です。
息切れや息苦しさなどの症状は、階段昇降や重い物を持ったときなど運動量の多いときに自覚する人もいれば、入浴、腕を上げる動作でも出現する人がいて、その人の呼吸機能や体力、合併症などによって異なります。
動いていて、息切れ、呼吸困難感があれば、休憩をとり、無理をしないようにしましょう。
しかし、活動せずに安静にしてばかりいると全身の筋肉が低下してしまいます。呼吸に関係する筋肉の維持のためにも、適切な運動を続けることが大切です。それぞれの患者さんに適した運動の量や内容については、担当医にご相談ください。

日常生活では、様々な場面で支障が生じると思います。例えば、重い物が持てないことにより、買い物や力仕事、趣味などに制限があるでしょう。息切れなどの症状、創(きず)の痛みなどによる疲労感と不安から、術後、活動の楽しみが減っているかもしれません。けれども、生活の仕方を工夫することで、新たな楽しみや目標が見つかると思います。

傷跡の変化(ケロイド・痛み・かゆみ、創部の感染症)

悩み

手術痕がケロイド状に残り、時間がたってもチクチク痛んでかゆみもあり、つらい。

助言

【医師に相談してみましょう】


手術などのきずあとが赤く盛り上がって見えるときは『ケロイド』の場合と『肥厚性瘢痕』の場合とがあります。肥厚性瘢痕は、赤く盛り上がっている部分がもとのきずあとの部分にとどまっているもので、一般にケロイドとしているものの多くは、この肥厚性瘢痕です。一方ケロイドは、元のきずあとを超えて広がりをもちます。
肥厚性瘢痕であっても、痛みやかゆみを伴うことが多く不快感は強いものがあります。

こういった症状に悩んでいらっしゃる場合は、専門医にみてもらい相談するという方法もあります。『形成外科』などで取り扱いますが、みてもらう際にも、どういった手術をしたのかの資料が必要になると思いますので、まず担当医にご相談ください。

治療としては、圧迫療法や飲み薬などの保存的治療と、瘢痕形成術などの外科的治療法があります。

だるさ・倦怠感

悩み

からだのだるさが抜けず、気力がでない。

助言

【適度な運動】


治療中、治療後に、体力低下やだるさを訴える患者さんは半数以上、なかには7割以上という報告もみられます。その原因には、副作用症状など治療による体への負担、また治療によって活動量が少なくなったことによる筋力低下、不安や心配事といったこころの面など、いろいろなことが関係しています。
体力低下を防いだり、体力をつけたりするには、適度な運動が勧められます。自転車や水泳は、膝や股関節にかかる負担が少ない利点があります。ウォーキングは、これまでに運動の習慣がない方でも比較的行いやすいと思います。病気の状況や体力に応じて、活動の程度、時間を調節してください。

【つらい気持ちを抱え込まない】


体力をつけるためには、毎日あるいは週何回というように、運動を継続しなければと考えがちです。回数や継続ということは後回しにして、1日限りの気持ちで出かけてみてはいかがでしょう。普段と違う景色を見たり、外の風にあたったりすると、気分が少し回復することがあります。
誰かと一緒に散歩をするのもよいでしょう。出かけやすくなりますし、散歩中にそれぞれ別の発見をしたり、違った面に気づいたりすることがあります。
つらい時、自分の気持ちを受けとめてくれる人、家族や何でも話せる友人の力を借りてください。
不安に思っていることや揺れ動く思いを聴いてもらうことも、気持ちを楽にします。一人で、つらさを抱え込まないで、周囲の人に話してみましょう。

(原因が特定できない)痛み

悩み

痛みがなかなかとれずつらい。

助言

【自分で痛みを評価して人に伝える】


痛みのつらさは、本人でなくてはわかりにくいものです。痛みの治療の第一歩は、あなた自身が痛みを評価して、医療者に伝えることです。
ただ、痛みは主観的な感覚なので、ほかの人にわかりやすく表現するのがなかなか難しいことも事実です。
そんな時には、次のように整理しながら話すと、相手に伝わりやすくなります。箇条書きのメモを作っておいて、診察に持参したり、担当医に手渡したりするのもよいでしょう。

○ 『どういうときに痛みが強くなるのか』
○ 『どのあたりが痛むのか』、『言葉で表現するとどういう痛みなのか』(きりきり、ずきんずきん、ずしーんなど)、『痛み止めを使っているとしたらその効果はどうなのか』
○ 『どのくらいの強さで痛むのか』(「全く痛くない」を「0」とし、「耐えられない程痛い」を「10」とした場合、数字でいくつと表現できるか)
○ 『日常生活で困っていることは何か』

【長く続く痛みへの対処】


がんの治療が一段落ついた後、定期的な検査で体に特に異常がないにもかかわらず、痛みが長く続くようであれば、担当医に相談して専門の医師を紹介してもらうことを考えてもよいでしょう。
最近では、『ペインクリニック』、『疼痛外来』、『ペイン外来』などの名称で、痛み治療の専門窓口を設けている病院も増えています。また、痛みの種類や原因によっては、麻酔科や形成外科に相談することが、痛みの解消に役立つこともあります。それぞれの窓口で対応できる痛みとそうでない痛みがあるので、受診する前に自分の痛みの状況を伝えて、対応してもらえるかどうか確認するようにしましょう。
長く続く痛みに対処するためには、毎日の生活の中で、痛みを和らげるための自分なりの工夫をしてみることが有効的なこともあります。そのためには、どんな時に痛みが楽になるのか、『痛みの日記』をつけてみるのもよいでしょう。
痛みがやわらぐ状況は、時間帯、そのときしている活動、取っている姿勢など、人によっていろいろなきっかけがあります。『痛みの日記』をつけることで、“痛いところを温めたら楽になった”、“○○さんとしゃべっている時は痛みを忘れていた”、“よく眠った次の日には痛みが減った”など、自分自身の痛みがやわらぐきっかけに気づくことができます。
その中から、自分にとって一番よかった対処法を、日常生活に取り入れてみましょう。

発熱

悩み

体力が落ち、食事がとれず、術後の経過が悪く微熱が続いたので、このままだめかと思った。

助言

【発熱による消耗】


発熱はさまざまな原因から起こります。症状や検査結果によって、薬(抗生物質)の選択と投与が行われます。
一般に体温が上がるのは、からだの防御を活発にするための自然な働きで、害ではないと言われています。しかし、高熱が続けば、脱水などが生じ、体力が消耗してくるので、熱を下げる必要があります。体温だけで判断して、解熱剤を使うと、熱を下げるときに発汗して、また熱の上がるときに寒気やふるえがあるということを繰り返して、かえって体力を消耗する場合もあるので、症状の有無や程度をみながら解熱剤を使います。
微熱であっても、水分や食事が摂れないと、からだがつらくなるので、この場合も、何らかの対処が必要になります。発熱の原因を治すと同時に、体力の消耗を最小限にすることが最優先です。

咳き込み

悩み

食べ物が気管に入りかけたり、喉にひっかかったりして咳き込むことが辛く、呼吸困難になることもある。

助言

【嚥下障害とは】


嚥下障害とは、食べるとむせたり、飲み込みにくくなったりして食べることが困難になることです。嚥下障害は加齢や体力低下、治療の影響によって起こります。
うまく飲み込めずに、食べ物が気管や肺に入ってしまうと(誤嚥:ごえん)、窒息や肺炎を起こすことがあるので、大変危険です。

飲食物を飲み込むというからだの仕組みは複雑です。飲食物が咽頭に入ると、鼻、気道との通路がふさがれ、食道が開いて胃に送り込まれていきます。この複雑な協調運動のどこに原因があるかによって、対処法は異なります。
咽頭筋の収縮が不十分であれば、あごをひくと飲み込みやすくなります。一方、食べ物を後方に送り込む舌の力が弱いときには、あごを上げるとよいです。
食事の飲み込みに困られているなら、担当医に相談して下さい。飲み込みに関するリハビリの専門家として、言語聴覚士がいる病院もあります。原因別に、食事のときの姿勢や、飲み込むコツを教えてもらうとよいでしょう。

姿勢のほか、食物の形態も飲み込みに関係します。サラサラしたもの、あるいはドロドロしたもの、どういった飲食物が摂りやすいかは、患者さんご自身がよく把握されていると思います。

【食べやすくする工夫・対応】


飲み込みにくいものは、ひと手間かけて安全な食事を心がけましょう。
飲み込みにくいもの別に、食べやすくする工夫・対応をまとめました。

(1)サラサラした液体(水、汁もの)
とろみをつけましょう。
 ○市販のとろみ剤を利用する
 ○片栗やくずを使う
 ○粘りけのある食材を使う

(2)バラバラするもの(口の中で小片となってばらけるもの)
まとまる工夫をしましょう。
 ○あんでとじたり、とろみをつけたりする
 ○ゼラチンや寒天で固める
 ○つなぎをいれる

(3)パサパサするもの(パン、ふかしいも、ゆで卵の黄身、焼き魚)
適度な水分・油分を加えましょう。
 ○煮たり、蒸したりする
 ○あんでとじる
 ○マヨネーズなど油脂類を加える

(4)かたく、かみにくいもの(こんにゃく、イカ、こぼう)、はりつきやすいもの(のり、わかめ、もち)
 ○繊維質を断つなど、切り方を工夫する
 ○やわらかくする下処理をする
 ○他の食べやすい食材に混ぜる
 ○肉はひき肉を利用するなど材料を考える
 ○無理なものは控える

持続する症状(その他)

悩み

体温調節が難しい。

助言

【室内温度や衣服の調整を】


運動をすると暑くなるのは、筋肉が活発に働いて、熱をつくり出すからです。体の細胞では、代謝が行われ、熱を発生しています。つくられた熱は、皮膚や汗から、体外に放出されます。
熱の発生と放出がバラバラでは、体温が一定に維持されないので、体のなかで体温調整の命令がだされます。しかし、高齢者や赤ちゃんは、体温調整機能の働きが十分とは言えません。筋肉が少ない女性のほうが、冷え性が多い傾向にあります。また、治療に使っている薬の影響によって、体温調整が難しく感じる場合もあります。
私たちの体温は、体のなかで行われる代謝のほか、外部環境の影響を受けながら、一定に保たれています。室内温度や衣服の調整をすることにより、体のなかの体温調整機能の働きを補ないましょう。感覚だけに頼らず、室内温度を調整するように心がけて下さい。

肝機能障害

悩み

抗がん剤で肝機能が低下し、心配。

助言

【薬の影響による肝臓機能の低下】


薬の影響で肝臓の機能が低下する場合があります。そのため治療中も血液検査をして、肝臓の機能を確認しながら治療を進めます。薬の影響であれば、中断することで機能が回復してきます。
 
薬の中断や再開に関しては、担当医が患者さんの体の状態を総合的にみて判断します。自覚症状が乏しかったり、具体的な注意点がなかったりするために、余計に心配に思われるかもしれません。回復の具合や、これからの治療の見通しといった心配な点について担当医に質問し、説明を受けましょう。

【肝臓は多くの働きをしている】


肝臓は、体にとって有害なものを無毒化したり、必要なものを合成、貯蔵したり、消化に必要な胆汁を作ったりと、多くの働きをしています。
一般に、肝臓は再生力が大きい臓器ですが、薬、過食やアルコール、過労などによって肝機能の低下をもたらします。肝機能障害の対処については、原因や機能障害の程度によって異なるので、担当医に確認してください。

腎機能障害

悩み

片方が腎不全であるため、時々、もう片方の腎機能のことで心配になる。

助言

【腎臓の働き】


腎臓は、体内で不要になった物質を体外に捨てる働きをしています。具体的には、尿という形で、水や電解質、各種老廃物を排泄しています。
そして腎機能の低下を、腎不全といいます。本来排泄される物質が体内に残ってしまうと、いろいろな症状を起こすことになりますが、片方の腎臓の働きが残っていれば、補うことができます。
担当医は、定期的に尿検査や血液検査などを行い、早期に腎機能低下を発見できるように努めています。薬の影響で、腎機能が低下することが予測される場合も同様です。
担当医から説明を受け、あなたの体の状態を把握するようにしましょう。また、指導があれば、それを守るようにして下さい。
尿の量や性質は、体の状態をうつしだしており、苦痛なく観察できます。水分摂取量が変わらないのに尿量が少なくなった、ほとんど尿がでない、あるいは一時的に尿量が多くなった、最近むくみと倦怠感があるなど、気づいたことがあれば、担当医に伝えてください。

(その他の症状)好きな食事ができない

悩み

退院をして通院で放射線治療を受けたが、白血球が下ったときに治療を中断して、肉類・レバーのようなものを食べた時を苦しいと思った。

助言

【いろいろな食品をバランスよく】


鉄欠乏性の貧血では、食事療法として、鉄分を多く含む食品(レバー、赤身の魚、かき・あさり・しじみなどの貝類、小松菜、ほうれん草など)の摂取がすすめられます。

しかし、血液中の白血球を増やす食事はありません。
食事は、いろいろな食品をバランスよく摂ることが大切です。
白血球減少の程度によっては、生水や生ものを控えたほうがよい場合があります。担当医の指示に従ってください。
また、食事に関連した副作用症状があるときは、食事のバランスよりも食べられるもの、食べやすいものを優先したほうがよいこともあります。食べやすいメニューについては、以下を参考にして下さい。

(その他の症状)不眠、眠りが浅い

悩み

よく眠ることができず、睡眠薬を使わなければいけないこともある。

助言

【睡眠の変化】


高齢の方の場合、日中のエネルギー消費や運動量が少なくなるために、身体が必要とする睡眠の量が減ります。また、夜間のトイレの回数が増えて目が覚め、睡眠が浅くなります。年齢を重ねるにつれ、睡眠の量と質が変化するのは、自然なことだといえます。
睡眠時間についても、個人差があります。睡眠時間にこだわりすぎるとかえって睡眠が浅くなる場合が多いようです。

【よい睡眠をとるために】


「眠れない」というのは、なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚める、早く目覚めてしまう、熟睡感がなく日中だるいなど、いろいろな型が考えられます。
よい睡眠をとるためのポイントをまとめました。
○規則正しい生活を送る(食事、運動など)
○起床後なるべく早く日光を浴びる
○静かで落ち着いた寝室に整える(音、光など)
○睡眠時間、就寝時間にこだわりすぎない
○睡眠を妨げるカフェイン、アルコール、ニコチンなどの摂取を控える
○自分にあったリラックス法をみつける

生活リズムにメリハリをつけることが大切です。外出の少ない生活や入院などにより、日中の活動量が不足していると、睡眠にも影響します。
また他に、身体の痛み、不安や緊張などがあると睡眠が妨げられます。原因や問題にあった対応をしていく必要があります。

睡眠薬は、医師の指示で正しく使えば安全です。「くせになる、だんだん効かなくなって量を増やさないといけない」というのは誤解です。担当医とよく相談してみましょう。

(その他の症状)疲れやすい

悩み

治療後、時間がたっても体力がもとにもどらず。疲れやすいため、悩んでいる。

助言

【体力の回復】


治療などによって、体力の予備力も少なくなり、体力低下を感じるかもしれません。どの程度の活動なら大丈夫なのか、どのくらいで回復するのかが分からないために不安もあります。
体力の回復には、患者さんの体力、治療の内容などが関係します。したがって、体力の回復にかかる時間は人によってさまざまです。患者さんが治療前にどのような生活を送っていたか、これからどのくらいの活動を行いたいと思っているかによって、目標となる活動量が違ってくるでしょう。
患者さんが「だいたい元の生活に戻りました」、「治療後の生活に慣れました」とおっしゃるのは、半年から一年ぐらいが多いように思います。
治療によっては機能障害が生じて、生活の仕方の変更を余儀なくされることもあるかもしれません。体力の回復を促すと同時に、これまでの生活習慣を見直したり、新たな生活をつくりだす必要があると思います。
回復の途中であっても、患者さん自身が現在のからだの状態をきちんと把握し、体力に見合った範囲で日常生活を工夫、調整することが大切です。適度な活動をすることで体力もつき、毎日を積極的な気持ちで過ごすことができると思います。ただ、疲れを感じたときは早めに休みをとり、無理をしないようにしましょう。
また、からだがつらいときには気持ちもマイナス方向を向いてしまいます。からだのつらさをできるだけ取り除くこと、こころのつらさをためこまないことが大切です。

食事があまり食べられない

悩み

食事をしても栄養が十分にとれていないのではないかと感じること。

助言

【栄養士に個別相談する】


必要なエネルギーは、体格や1日の活動量によって異なります。患者さんの現在の食事内容や、消化機能、食習慣などを総合的に判断して、患者さんや、調理されるご家族にあった改善方法を提案する必要があります。例えば、口の中が痛い、食物が喉を通りにくいといった症状がある場合には、調理法や味付けを含めて考えます。
おかかりの病院の栄養士に相談できないか、担当医に聞いてみるとよいでしょう。お住まいの自治体でも栄養相談を行っている場合があるので、保健センターにお問い合わせ下さい。

【栄養をできるだけとる: 栄養補助食品の利用】


食事があまり摂れていない時には、消化吸収がよく、バランスのとれた栄養素を配合している濃厚流動食(バランス栄養飲料)や栄養補助食品を利用するのもひとつの方法です。

◎ 栄養補助食品の購入方法
「栄養補助食品を買おうと思ったけれど売っていません。どこで買えばいいの?」と、いうような声をよく耳にします。
残念ながら、これらの栄養補助食品は、一般のスーパーなどで買えないものが多いのが事実です。しかし、通信販売などのシステムは充実していますので、かかっている病院の管理栄養士に相談して購入できるところを教えてもらうのもよいでしょう。

日常生活への影響(その他)

悩み

食事の味がわからないことで悩んでいる。

助言

【味覚の変化】


抗がん剤、放射線治療によって、舌にある味を感じる部分や、味を感じて脳に情報を伝達する神経が影響を受け、味覚が変わることがあります。また、口の中の粘膜障害によって起こります。いろいろな原因とそれに合った対処法があります。

【唾液の働き】


唾液は、口の中を湿らせて、食物をかみ砕き、飲み込むことを容易にします。また、口の中を清潔にし、味覚を助ける働きがあります。治療の副作用で、唾液の分泌が抑制されると、口の中が乾燥したり、味覚が変化するなどの症状を伴うことがあります。

【口の中をできる限り清潔に保つ】


毎食後と就寝前に、柔らかめの歯ブラシで、歯、歯肉、舌を磨いてください。もし、磨くときに痛みがあれば、ぬるま湯を使い、より柔らかい歯ブラシで磨いてください。
強い口内炎があり、粘膜がしみる場合は、ハミガキを使わないで、水だけで歯磨きをしてもよいでしょう。

【うがいをしたり、あめをなめたりする】


口の中が汚れていると、味も変わってきます。歯磨きやうがいをすることで、口の中の汚れがとれ、味の感じ方が変わることもあります。
また、レモン水や緑茶を飲んだり、無糖の固いあめをなめたりすることも効果的です。自分に合った方法で、口の中を清潔にしましょう。

【味覚の変化や症状に合わせて、味を調整する】


「味がしない」、「味が薄すぎる」と感じる時は、味のはっきりした料理にしましょう。
味付けがはっきりしている料理とは、味付けを濃くすることもそうですが、塩分を多くとったり砂糖を多く入れたりすることばかりを言うのではありません。味をはっきりさせる工夫を参考にしましょう。

【味をはっきりとさせる工夫】


◎ だしをきかせる
塩分を増やさずに、味をはっきりさせる工夫をしましょう。
削り節を煮出した後、しばらくおいて冷ますことで、だしがよく出ます。また、シチューにバターなどの乳製品を加えたり、煮物にみりんや酒を加えたりすることで味にコクが出ます。

◎ ごま、ゆずなどの香りや、酢を利用する
酢の物にレモン、かぼす、ゆずなどを添えると酸味がよく効くようになります。
アジを素焼きにして、レモンなどをしぼって食べてみましょう。しょう油をかける時は、なるべく少量にするよう心がけます。また、片栗粉をまぶして揚げてから酢醤油につけ、南蛮風にしてみるのもよいでしょう。

◎ 食材のうまみをいかす
食材を増やすことで、具のうまみがたくさん出て味がはっきりします。
汁物を作る時は、みそやしょう油の量は普段通りで増やさずに、具をたくさんにしてみましょう。具の種類を増やしてみるのもよいでしょう。

◎ 味にアクセントをつける
味の変化が少し分かる場合には、味に変化をつけたりアクセントになるものを添えたりすることが効果的です。
からしあえ、ごまあえ、梅肉あえ、しょうが焼き、セロリやクレソンのサラダ、カレー風味など、多少の香辛料や香味野菜を用いて味に変化をつけるとよいでしょう。また、漬物などを味のアクセントにそえることも効果的です。

◎ 少し低温の料理にする
できたての温かいものを食べるよりも、少し冷めた程度の料理を食べる方がおいしく感じることがあります。
肉じゃがやシチュー、茶碗蒸しなどは、冷ましてから食べてみましょう。

胸水

悩み

胸水が溜まって、咳がでて、呼吸が苦しいときもある。

助言

【胸水とは】


胸水とは、肺を包む2層の胸膜の間に液体が過剰に貯まった状態を指します。正常でも少量の液体があり、胸膜の動きをなめらかにして、呼吸運動を助けています。大量に胸水が貯まると、肺が広がったりしぼんだりしにくくなり、息苦しさなどを起こします。
症状をやわらげるため、胸水を抜きとる処置が行われることもあります。
呼吸器の症状があらわれたり、症状が強くなったときは、医師の診察を受けて下さい。

【深くゆっくり呼吸をする】


浅い呼吸をたくさんするよりも、深くゆっくり呼吸をするほうが、たくさん酸素を取り入れることができます。
呼吸法を練習してみましょう。もし呼吸が乱れて、苦しい感じがしたら休んでください。呼吸の練習はリラックスして行うことが大切です。

(1) 手をお腹におき、十分に息をはきだしてから始めます。
(2) 口を閉じて、鼻から深く呼吸します。お腹が盛り上がってくることを手で確認し、肩が上がらないように意識します。頭の中で「1、2」と数えながら行ってみましょう。
(3) 口をすぼめてゆっくり息を吐き出し、お腹をもとにへこませます。息を吐くときは、吸うときの2倍以上の時間をかけることが目標です。
(4) これを数分間、繰り返してみましょう。

発症部(原発部位、再発・転移部位)の痛み

悩み

がんやその転移が原因で、痛みがあり、とてもつらい。

助言

【自分の痛みを評価して人に伝える】


がんによって起こる痛みに対しては、様々な薬が用いられるようになってきています。それぞれの患者さんの痛みに対して、どういう薬や方法を使うのが一番良いかを判断するためにも、患者さん自身が痛みを評価して人に伝えることが大切です。
痛みには個人差があり人によって感じ方もつらさも異なり、人には伝わりにくいときがあります。まずは、ご自分の痛みについてよく知り、それを評価してみましょう。どういうときに痛みが強くなるのか、どのあたりが痛むのか、言葉で表現するとどういう痛みなのか(きりきり、ずきんずきん、ずしーんなど)、痛み止めを使っているとしたらその効果はどうなのか、といったことです。
これらを医師や看護師に痛みの状況として伝えることが治療の第一歩になります。

【緩和医療について】


現在では、からだの苦痛だけではなく、こころのつらさ、社会的な問題によるつらさなどを含めて総合的に、患者さんやそのご家族のつらさをやわらげるサポートが行われています。これは、『緩和ケア』、『緩和医療』と呼ばれ、いろいろな薬や治療法(この治療法というのは、がんを治す治療ではなく、がんによる苦痛をやわらげる治療法です)、ケアの方法が考えられています。そして、様々な専門の職種の人々が関わっています。
緩和ケアは、終末期だけに行うものではありません。WHO(世界保健機関)の定義に、「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな(霊的な・魂の)問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフ(生活の質、生命の質)を改善するためのアプローチである。」 とあるように、がんと診断された早期から、またがんの治療の過程においても痛みなどの症状の緩和が行われます。
痛みを我慢せずに、担当医に伝えましょう。なかなか痛みがとれないようであれば、痛みの専門家を紹介してもらってもよいでしょう。医療機関によっては、ペイン(痛み)外来や緩和ケア外来があり、専門家が担当医と協働しながら症状のコントロールにあたっているところもあります。緩和ケアのある医療機関については、下記をご参照ください。

がんに伴う症状(その他)

悩み

なぜ仙骨に転移したのかわからない。しびれがひどい。

助言

【骨への転移】


ある場所にできたがんが、血液やリンパ液の流れにのって移動し、別の場所で増えることを転移と言います。骨に転移しやすいのは、肺がん、乳がん、前立腺がんなどです。
骨転移の治療は、痛みをやわらげたり、機能障害をできるだけを防いだりすることを目標に、薬や放射線治療が選択されます。転移したところだけでなく、もとのがんの状態も含めて、患者さんの全身の状態によって、治療の方針や内容が決定されます。

わからない点は、担当医に積極的に質問し、きちんと説明を受けることが大切です。現在ある症状が強くなったとき、他の症状が出てきたときには、すみやかに担当医に連絡する必要があると考えられるので、具体的にどういった場合かについて、担当医に確認して下さい。

他の病気の併発による症状

悩み

肺炎が今後どのようなことになるのか不安。治る薬、方法はないかと心配。

助言

【早めの受診と体調管理】


肺に放射線をあてて炎症を起こしやすい状態になっていたり、抗がん剤治療で免疫力が低下し感染しやすい状態になっていたりして、肺炎になることがあります。医師は、血液検査や胸部レントゲン写真などの検査データを参考に、原因や程度を判断します。治療は、原因によって、抗生物質、ステロイド剤の投与などが行われます。
悪化をいかに防ぐかということが治療の要になり、肺炎の繰り返しや、重症化を防ぐためにも、予兆がみられたら、早めに受診することが大切です。

次のような症状が見られたら、病院を受診しましょう。
○発熱
○咳、痰が増えた
○息切れ、呼吸困難感
○胸痛

日頃の体調管理では、
○うがいや手洗いの励行
○風邪をひいている人との接触や人混みをさける
○十分な栄養と休息をとる
ことが大切です。