悩み(分類)

がん告知 ショック(強い衝撃、頭が真っ白)



助言


【がんとわかったときのがん経験者の状況】
がんと診断されることは、衝撃的な出来事です。特に、余命を告げられたり、がんの進行度により、さらに死を意識し、その衝撃はとても大きいと思います。悩みの調査のなかでも何人もの方が、「その瞬間、頭が真っ白になってしまって、その後先生が何を話したのか全然覚えていない、どうやって自宅に帰ったのかもわからない。」、「呆然として何が何だかわからない。」など書かれていました。これらの言葉は、その衝撃の大きさをあらわしていると思います。
また、混乱のなかで、気持ちが落ち込んだ状態が続き、部屋に引きこもってしまったり、誰とも話したくなくなることもあります。ご家族や親しい人の何とか支えたいという思いからかけた言葉も、時には白々しく感じ、(誰にも自分のつらさはわからないのに、簡単なことを言うな!)と怒りがわくこともあります。同時に、どのようになるのかわからない未来への漠然とした不安が次々と頭をめぐります。
このようなときは、こころがとても過敏になっているので、周囲の何気ない言葉や振る舞い、視線などに対して、悪い方へと考えがちで、自分だけが孤立してしまったような感覚にもなります。
こころの動揺や不安定さは、がんを告げられたとき、余命を告げられたとき、誰にでも起こることです。ご家族や周囲の方々は、誰にでも起こりうる患者さんのこういったこころの状態を理解しましょう。

【つらさを抱え込まないで】
とてもつらい時、自分の気持ちを受けとめてくれる人、家族や何でも話せる友人に、不安に思っていることや揺れ動く思いを聴いてもらうことも、気持ちを楽にする方法の一つです。一人で、つらさを抱え込まないで、周囲の人に話してみましょう。泣いてしまってもかまいません。
また、口にしなくても、ふっと自分を心配し気遣う周囲の人々の思いが感じられた時、一人ではないと感じて温かい気持ちになれたり、そんな時間がほんの少しでも気持ちを楽にしてくれると思います。

【ご家族や親しい方の対応】
ご家族や患者さんが親しい方など周囲の方々は、患者さんのこころが不安定な状態になっていることを理解しましょう。
患者さんが、ご家族の言葉やふるまいに過剰とも思える反応があっても、それは患者さんが心を許せるご家族だから自然に出ていることです。
また、大きな衝撃を何とか乗り越えようと、患者さんのこころの中では本当に大変な努力が行われています。
このような時期には、特に「がんばれ」や「しっかりしろ」という励ましや、「考えるな」という言葉は禁句です。
患者さんは一生懸命がんばっているし、しっかりしたいと誰よりも願っているからです。
この時期には、「見守る」ということが大切になります。

また、ご家族にとっても、自分の大切な家族の衝撃的な出来事に心が揺さぶられ、つらくなることがあります。そのうえ、“(患者さんを)支えなければ”、“私ががんばらなければ”など、自分を奮い立たせ、からだもこころも無理をしてしまうことがあります。確かに患者さんもつらいですが、それを見守るご家族もさまざまなつらさを抱え込んでしまいがちです。
そのようなときは、がん相談支援センターにご相談ください。多くのがん相談支援センターは、電話相談も行っているので、ご自分のつらさを話してみてもよいでしょう。ご家族もご自分の気持ちを無理に押し込めないように、患者さんのこころも自分のこころもどちらも大切にしましょう。

【こころが落ち着いてくるまでの期間】
こころが落ち着いてくるまでの期間は人によって異なりますが、2~3週間くらいすると、少しずつ具体的なことを考えたり、気持ちが落ち着いてきます。これは、こころがすっかり落ち着きを取り戻したということではなく、まだ不安定ではありますが、その中でも少しずつ変化が出てくるということです。
この時期になると、周囲の人の自分へのいたわりや、自分を必要としてくれる気持ちが少しずつ素直にこころの中にも入ってきます。

【自分の中には自分らしい強さがあります】
人間というのは、ある意味でとても強いものです。無意識のうちに、こころを防衛しようと試みますし、過去に自分が同じようなつらさを味わった時の対処を試みようとします。
『がん体験者の声』の中には、動揺や絶望感だけではなく、それぞれの方が自分なりに対処しようとする行動や、周囲へのサポートを求める中で解決しようとしている行動も書かれていました。
いろいろとつらい思いをされている患者さんやそのご家族に簡単に口にできる言葉はありませんが、自分の中の強さを信じることは大切だと思います。同時に、周囲の人々から、積極的に眼にみえる言葉やふるまいはなくても、さまざまな場面で支えてもらっていると感じると、(一人ではない)と温かさと優しさが伝わり、こころが少しほっとするかもしれません。

【こころの専門家】
不安定なこころの状態が続く時には、一度こころの専門家に相談してみるという方法があります。
こころが不安定で、他には何も考えられなくなった、何事にも集中できない、誰とも話したくない、夜眠れない、食欲がない、などの症状が続くような時は担当医やこころの専門家(精神腫瘍科医、心療内科医、精神科医、公認心理師、心理療法士、リエゾンナースなど)に相談してみてください。気持ちを落ち着けるお薬を飲んだ方がよい場合もあります。
こころの専門家というと、“自分がおかしくなったのではないか”と思い抵抗がある方もいらっしゃると思いますが、このようにこころが不安定な状態になることは、がんにかかった多くの方が経験することです。
がんと向き合う時、からだの方は担当医がサポートしてくれますが、こころの方は周囲の人とともにサポートしてくれる専門家に少し頼ってみることで、どうしていけばよいのか、自分なりの答えがみつけられることがあります。

【このようなときどうしたらよいか】
不安が強い時、精神的に不安定な時、どうしたらよいかということに対して、はっきりした答えはありません。それぞれ自分なりのやり方があります。
どうしたらよいか考える時、自分が今まで同じようにつらい出来事に遭遇した時、どのように考えたり行動したりしたかを思い出してみましょう。人によっては何かに集中したり、そういう時間が少しでもあるとほんの少しでも楽になる時があります。泣けるようなテレビや映画をみて、思い切り泣いたという人もいます。スポーツをした人もいます。仕事に集中した人もいます。病気や治療について、一生懸命に調べて情報を集める人もいます。
自分が過去に行ってみて成功したやり方を試してみましょう。

(更新日:2019年2月18日)


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