悩み

薬の副作用でかつらになった。近寄ってくる子どもに頭を触られないように意識してしまい、子どもと思いっきり遊べなくなり暗くなった。



助言


【お子さんと向きあう】


お子さんの年齢や癖もあるかもしれませんが、日頃からお子さんはあなたの髪にすぐ手を持っていき、ひっぱったりするのでしょうか。
もしかしたら、あなたはお子さんに病気のこと、治療のことは一切話していないのかもしれません。そして、お子さんがショックを受けないように、細心の注意を払って接していらっしゃるのかもしれません。
けれども、あなたのすぐ側にいて、あなたが大好きなお子さんは、あなたのちょっとした言葉の変化、態度の変化、行動の変化に何かこれまでと違うあなたを感じているのかもしれません。

隠し事のつらさは、隠す方だけではなく隠される方も同じなのではないでしょうか。
どんなに小さなお子さんであっても、その年齢に合わせて、理解することができます。
小さいお子さんの場合、『がん』、『手術』、『抗がん剤治療』や『放射線治療』といっても、ぴんとこないかもしれません。その場合は、『悪いできもの』、『悪いできものをとってしまう』、『強い治療』などの表現でもかまいません。薬の副作用も、「できものをやっつけるのに強いお薬を使うから、体もできものとお薬が闘っている影響で調子が悪くなることがあるの。気持ち悪くなったり、髪の毛が抜けたり・・・。でも、治療が終わったらよくなってくるからね。」というような表現でもかまいませんし、伝え方は、一通りではありません。ご主人(パートナー)の方などご家族ともよく話し合ってみましょう。

お子さんとの対話、スキンシップのなかから、お子さんはあなたのお子さんに対する愛情を感じるでしょう。

お子さんに伝えたら、それで終わりということはありません。あなたにとっても、お子さんにとっても、その後、さまざまなことが起こると思います。イライラしたり、気持ちが落ち込んだり、こころが不安定になることもあるでしょう。
つらいと感じる時には、一人で抱え込まないで、ご家族や友人などに話してみましょう。気持ちを口にするだけでも、少し気持ちが軽くなることがあります。また、周囲の人から、現状を改善するためのよいヒントをもらえるかもしれません。

お子さんにも、つらくなったら決して一人でがまんして抱え込まないで、周りの人に気持ちを聞いてもらったり、相談してかまわないのだということを伝えてあげてください。


 
参考になるホームページ
(1) Hope Tree (ホープツリー)~パパやママががんになったら~
https://www.hope-tree.jp/
がんになった親を持つお子さんをサポートする情報を提供するサイトです。『がんになった親と子どものために』というページには、翻訳コンテンツとオリジナルコンテンツがあります。
翻訳コンテンツでは、子どもに伝えるときは3つの"C"を念頭に、がんについて子どもと話をするときの10の秘訣、思春期の子どもを支援するための10の助言など8つの内容があり、それぞれPDFでダウンロードもできます。オリジナルコンテンツでは、参考サイト・資料の紹介、迷ったときに手にする本などの情報があります。また、がんの親をもつ子どものサポートプログラムの紹介のページもあります。
(2) キャンサーペアレンツ
https://cancer-parents.com/
子育て世代のがん患者さんたちがつながり支え合うピアサポートの団体です。インターネットでの交流や情報発信など行っています。

 

【同じ病気の方の体験談に触れてみる】


『同じ病気の患者さん同士だからこそわかる悩みや気持ち』があります。お互いがいろいろな気持ちを出し合ったり、先人の体験談を聴くと、つらさがやわらぐこともあります。
子どもさんのいる方、同年代の方、あなたと同じ病気の方や同じような治療を受けている方と話したり、体験談を聴くと、自分なりの対処をしていくためのヒントを得られるかもしれません。

◎ 病院で知り合った患者さんと話す
入院時に同室になり友人になったという方もいらっしゃいますし、担当医が同じでいつも外来の待合室で顔を合わせているうちに、少しずつお話をするようになったと言われる方もいらっしゃいます。同じ病院で治療をしていたり、同じ担当医だと顔を合わせる機会も多く、また共通の話題もありますから、話がしやすいかもしれません。同じような体験をした方と交流を持つことで、自分の気持ちが整理できたり、思いを分かち合える場合もあります。
ただし、悩みや問題の感じ方、対処も人それぞれです。その方の考え方・感じ方、行動の仕方は、あなたとは異なることもあります。

◎ 患者会に参加してみる
患者会などへの参加という方法もあります。患者会は、病気を経験した人やその支援者が集まって、自主的に運営する団体です。活動の内容は、それぞれの患者会によって異なりますが、定例会を通じた気持ちの分かち合いや情報交換、電話等での悩み相談や情報提供、会報の発行などを行っている団体が多いようです。
患者会には、がんの部位別になっているもの、がん全般のものなどがあります。大きな患者会になると、都道府県毎に支部などがある場合もありますが、全体的にみて、患者会の種類や活動も大都市などが多く、地方では探すのもなかなか大変ということもあります。

患者会に関する基本的な情報(会員の病気の種類、主な活動の内容、会員数、連絡先、年会費など)は書籍やインターネットで調べられます。またお近くのがん診療連携拠点病院の相談支援センター(よろず相談)に問い合わせても、情報を得ることができます。

ただ、情報を得た患者会が自分に本当に合っているかどうかは、会の雰囲気なども含めて、きちんと確かめてみる必要があります。関心をもった患者会については、電話やホームページで活動内容をよく確認し、会報を送ってもらったり、試しに一度定例会に顔を出したりすることはできないか、尋ねてみてください。

患者会に初めて連絡する時には、少し勇気がいるかもしれません。ですが、多くの患者会は、患者さん同士で支え合う気持ちが出発点になっているので、知りたいことを率直に伝えれば、きっと力になってくれると思います。また、お住まいの地域に患者会がなかったり、あっても仕事等の関係で継続的に参加することが難しかったりする場合には、インターネット上の掲示板やメーリングリストを使ってやりとりを行っている団体もあります。
ただ、体験者同士の情報交換では、個人の体験に基づいているため、情報が偏っていたり、誤っていたりする場合もあり注意が必要です。

○ インターネットで交流する
それぞれの患者さんが個人で開設しているブログ、ホームページがあります。ご自分の闘病日記のようなものを載せている方も増えています。直接のやりとりではないのですが、患者さんの闘病記も、患者さんの体験や思いがつづられたものなので、読んでみても良いかもしれません。


 
参考になるホームページ
健康と病の語りディペックス・ジャパン
https://www.dipex-j.org/
ディペックス・ジャパンは、英国オックスフォード大学のDIPExをモデルにした日本版の健康と病いの「語り」のデータベースです。
がん経験者に関連した語りでは、乳がん経験者、前立腺がん経験者の語り、臨床試験・治験の語りなどが収録されています。映像や音声、テキストを通じて、がん経験者の声を知ることができます。

 

【あなた自身のつらさをやわらげることも大切です】


外見の変化というのは、こころのつらさを伴います。
自分にとって、この治療は必要だ、この治療では脱毛が起こると説明を受けて、頭ではわかって納得したつもりでいても、こころがついていかないことがあります。かつらをつけたり帽子をかぶったりしても、人の視線が自分の頭にばかり注がれているように感じてしまうこともあります。これは、その人自身のこころのつらさから出ることなので、明確な1つの回答はありません。
つらい時は、我慢せずに、担当医や看護師、おかかりの医療機関の相談員や、がん診療連携拠点病院の相談支援センター(よろず相談)の相談員、あるいはご家族に、相談したり、つらい気持ちを話してみてください。あなたは一人ではありません。一緒に考え、あなたのつらさを受けとめてくれる人がいるはずです。

お子さんのお友達、その親御さん、友人・知人、職場の人、近所の人などとの関わり方は、人によって異なると思います。相手の方が、あなたががんで治療をしていることを知っていても知らなくても、脱毛、あるいはかつらに気づいた時の反応は人によって異なります。気を遣いすぎてしまう人もいれば、無関心を装う人もいますし、ストレートに気づいたことを言ってくる人もいるでしょう。何気ない視線や態度、言葉に傷ついてしまうこともあるかもしれません。
でも、そういった時には、あなたががんばって治療を続けていることを知っていて、あなたをサポートしてくれる人たちのことを思い出しましょう。一人ではないと気づくことは、傷ついたあなたのこころをやわらげてくれると思います。


 
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