悩み

抗がん剤の副作用で髪が抜けかつらを使用していたが、子どもの友達がそれに気づき、自分のせいで子どもがいじめられないかと心配だった。



助言


【子どものために「今できること」を始めましょう】


あなたががんと診断されたことで、ご家族それぞれに大きさは異なっても影響が出てきます。ただし、これは、ご家族の誰か、あるいはご家族全体に大きな出来事が生じたときに起こることで、がんだけ特別という訳ではありません。
お子さんにがんと告知をしている、していないにかかわらず、お子さんの心身への影響もゼロではないでしょう。ただ、どういう影響があったとしても、お子さんも含めて、ご家族それぞれが自分なりの対処をしたり、お互い協力したりサポートしあったりして対処をしていきます。

一番大切なことは、どういうときでもご家族の中でのコミュニケーション(対話)を欠かさないことです。

いじめは、とても些細なことがきっかけで起こります。もしあなたのお子さんがあなたの病気のことや外見の変化のことでからかわれたり、いじめが起こったとしても、それはあなたのせいではないし、あなたのお子さんのせいでもありません。
あなたが気をつけることは、まずお子さんに変化がないかを早く見つけることです。
たとえば、実際にいじめが起こっていると、
◎口数が少なくなって元気がなくなったり、いらいらしたり、反抗的になる
◎学校に行きたくないと言い出したり、学校に行く時間になるとからだの具合が悪くなる
◎家族との会話が少なくなったり避けるようになる
◎衣服が汚れていたり、破れていたりする
◎持ち物がなくなっていたり、壊されたりしている
などの変化があるはずです。
いじめだけではなく、お子さんがいろいろなことで悩んだり困ったりしているときにも、子どもさんの表情、口数、口調の変化、不眠や様々な身体症状の訴えなど、いろいろなサインを見逃さないように気をつけましょう。
そして、何か変化があったら、お子さんの話をしっかり聴いてあげて、それから一緒にどうしていくかを考えましょう。

これから起こるかもしれないことを心配し始めると、どうしても悪い方へ悪い方へと考えてしまいます。
お子さんのために、今自分ができることから取り組んでみましょう。


 

【あなた自身のつらさをやわらげることも大切です】


外見の変化というのは、こころのつらさを伴います。
“自分にとって、この治療は必要だ”、“この治療では脱毛が起こると説明を受けた”と頭ではわかっていて、納得したつもりでいても、こころがついていかないことがあります。かつらをつけても帽子をかぶっても、人の視線が自分の頭にばかり注がれているように感じてしまうこともあります。これは、その人自身のこころのつらさから出ることなので、明確な1つの回答はありません。
つらいときは、我慢せずに、担当医や看護師、おかかりの医療機関の相談員やがん診療拠点病院相談支援センターの相談員、あるいはご家族に、相談したり、つらい気持ちを話してみてください。あなたは一人ではありません。一緒に考え、あなたのつらさを受けとめてくれる人がいるはずです。

また、『同じ病気の患者さん同士だからこそわかる悩みや気持ち』というものも確かにあります。直接、患者さんを診ている担当医や看護師だからこそ、言えないこともあると思います。
あなたと同じ病気の方や同じような治療を受けている方と話してみると、自分なりの対処をしていくためのヒントを得られるかもしれません。
あるいは、患者会や患者支援団体に参加し、お互いがいろいろな気持ちを出し合ったり、先人の体験談を聴くと、つらさがやわらぐこともあります。


 

【患者会や患者支援団体】


患者会は、病気を経験した人やその支援者が集まって、自主的に運営する団体です。
患者会などに関する基本的な情報(対象となるがんの種類、主な活動内容、地域、連絡先、会費など)は、書籍やインターネットで調べることができます。また、がん診療連携拠点病院の相談支援センターに問い合わせても、情報を得ることができます。
患者会の具体的活動内容は、それぞれの会によって異なりますが、定例会を通じた気持ちの分かち合いや情報交換、電話等での悩み相談や情報提供、会報の発行などを行っている団体が多いようです。がんの患者会には、がんの種類を限っている団体もあれば、様々な種類のがんの患者さんが支え合う団体もあります。
ただ、情報を得た患者会が自分に本当に合っているかどうかは、会の雰囲気などを含めて、きちんと確かめてみる必要があります。関心をもった患者会については、電話やホームページで活動内容をよく確認し、会報を送ってもらったり、試しに一度定例会に顔を出したりすることはできないか、尋ねてみてください。
患者会に初めて連絡する時には、少し勇気がいるかもしれません。ですが、多くの患者会は、患者さん同士で支え合う気持ちが出発点になっているので、知りたいことを率直に伝えれば、きっと力になってくれると思います。

患者さん同士のコミュニケーションを通して、不安や悩みなどを共有したり、経験に基づく細やかで具体的な対処法を参考にしたりすることができ、心強く感じるという利点があります。


 
参考になるホームページ
健康と病の語りディペックス・ジャパン
https://www.dipex-j.org/
ディペックス・ジャパンは、英国オックスフォード大学のDIPExをモデルにした日本版の健康と病いの「語り」のデータベースです。
がん経験者に関連した語りでは、乳がん経験者、前立腺がん経験者の語り、臨床試験・治験の語りなどが収録されています。映像や音声、テキストを通じて、がん経験者の声を知ることができます。

 

【周囲の人とのかかわり】


お子さんのお友達、その親御さん、友人・知人、職場の人、近所の人などとの関わり方は、人によって異なると思います。相手の方が、あなたががんで治療をしていることを知っていても知らなくても、脱毛、あるいはかつらに気づいたときの反応は人によって異なります。気を遣いすぎてしまう人もいれば、無関心を装う人もいますし、ストレートに気づいたことを言ってくる人もいるでしょう。何気ない視線や態度、言葉に傷ついてしまうこともあるかもしれません。
でも、そういったときには、あなたががんばって治療を続けていることを知っていて、あなたをサポートしてくれる人たちのことを思い出しましょう。一人ではないと気づくことは、傷ついたあなたのこころをやわらげてくれると思います。


 
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