悩み

親への告知に悩んだ。



助言


【伝えることと伝えないこと】


原則的には、家族内での隠し事は、できるだけしないことが望ましいと思います。たとえ隠す事が思いやりや優しさのつもりでも、家族内のコミュニケーションがうまくすすまなくなったり、こころのずれが生じたりする原因になります。
一方、家族関係にもいろいろあり、長い年月疎遠なご家族もいらっしゃいます。優しさや思いやりからのためらい、希薄な関係性からのためらい、ためらう理由は、人それぞれといえます。
このように考えると、親や兄弟等に伝えるかどうかは、最終的にはご本人が決めることになります。
ここでは、「年老いた親にショックを与えたくない」等の理由により、告げるのをためらっている方に、これまで出会った多くの患者さんやご家族との経験をもとに、一つの考え方の例についてお話しします。

親にとって、自分の子どもは何歳になっても大切な存在です。自分が守り慈しんで育ててきたお子さんががんになったということを知らされれば、動揺しショックを受けてしまうかもしれません。
だからといって、もしご両親が高齢だから、あるいは気が小さく受けとめきれないかもしれない、親御さんも体調が悪いからとかの理由で伝えないというのは、本当の優しさや思いやりなのか、もう一度自分自身に問い直してみましょう。
逆の立場にたって考えてみると、自分の大切な家族に起こった大変な出来事を全く知らなかったことを後で知ったときには、何ともいえないつらさを感じるのではないでしょうか。また、時には知らないばかりに何もできなかったと自分を責めたり、後悔したりすることもあります。

がんは、慢性疾患の一つといわれています。治療が終わればそれで終わりということではなく、定期的な通院や検査が必要ですし、もし再発や転移が見つかったら、再び治療を開始しなければいけないこともあります。そのなかで隠し続けること自体、とても大変なことです。
たとえ同居をしていなくても、ご両親は何かのきっかけで“どこかおかしい”と感じるかもしれませんし、電話であなたと話していても、どこかにこれまでと違うあなたを感じるかもしれません。そして、ご両親からの問いかけに嘘をつき通すことは、あなたにとってもこころの負担になってしまうことだと思います。

ただ、伝えると言っても、あなたが伝えなければいけないということはありません。あなたが診断と治療の説明を受けたばかりであれば、あなたは自分の中でその事実を受けとめていくだけでも大変な努力をしているはずです。治療に向けてやらなければいけないことがたくさんあるかもしれません。また、自分のことだからこそ、伝えたときのご両親の反応を思うとやりきれない気持ちになるかもしれません。
伝えるかどうか、伝えるとしたら誰が伝えるか、どのように伝えるかをあなたが信頼できる人とよく話し合ってみましょう。あなたのパートナーでもあなたのお子さんでも、友人でもかまいません。一緒に考えてもらうことで、もしあなたのご両親がその事実で動揺やショックを受けても、あなたの周囲の人々がそんな両親をサポートしてくれるでしょう。また、あなたが信頼できる方に話してもらうことが、説明を聞くご両親にとってもワンクッションとなり、動揺やショックをやわらげるかもしれません。


 
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