悩み

体調が優れないことが多いので、このまま仕事を続けられるか、職場の仲間に迷惑をかけているのではないかと心配だ。



助言


【職場の上司や同僚の理解を得る】


仕事は、単に経済的な理由からだけではなく、あなたの『自分らしさ』を支えてくれるという意味でも大切なものです。
がんの治療と仕事を両立させるためには、職場の上司とごく身近な同僚に対しては、自分の病気についてきちんと伝え、相談した方がよいと思います。
がんを治療する際には、手術で入院したり、自宅で療養したりするために、仕事を一週間以上休まなければならないこともあります。
また、治療が一段落しても、体調が何もかも元通りになるとは限りません。病気の性質上、場合によっては入退院を繰り返すこともあるでしょう。
確かに、がんという病気に対する暗いイメージは根深いものがあります。しかし、あえて話しておくことで信頼が深まり、いざという時に相手があなたを守ってくれるという可能性もあります。
また、それまでやってきた仕事を同じようにはこなしていくことが難しくなった時には、負担を軽減してもらえないか、上司に相談してみることも必要です。
その場合には、上司の側から提示できる範囲で案を出してもらうことも一つの方法ですが、『これから半年にわたって抗がん剤治療を受けることになったので、その間外回りの営業を外してもらうことはできないでしょうか』など、おおよその見通しや軽減してもらいたい作業を具体的に伝えた上で、あなたと上司が折り合うことのできる地点を探していく、という方法をとることもできます。


 

【同僚が必ずしも迷惑と思っているとは限らない】


迷惑をかけているのではないかと心配されているとのことですが、何か直接、そのことをほのめかすような態度や言葉を見聞きされたのでしょうか。
体調が優れず、気持ちが落ち込んでいるときには、周囲の何気ないしぐさや物言いの一つひとつを、悪い方へ悪い方へと考えてしまいがちです。もしかすると、あなたの心配はとりこし苦労かもしれません。
がんの患者さんが『家族に負担をかけている』と思っているとき、家族の方では実際にはそれほど負担には思っておらず、むしろもっと患者さんのために力を尽くしたいと感じている、ということは、よくあることです。
同じような状況は、職場でも起き得ます。
たとえば、あなた以外の誰かが病気になり、仕事の負担が多少増えたとして、あなたはそれを迷惑に思うかどうか、考えてみてください。もしも同僚がそれで病気の治療に専念できるのであれば、あなたは喜んでそれを引き受けるのではないでしょうか。その同僚と、『仲間』と呼ぶことができるような信頼関係で結ばれているのであれば、なおさらそうでしょう。
ただ、合理化が急激に進む近年の就労環境にあっては、一人が働けないことで、周囲の人に振り分けられる仕事の量が相対的に大きくなっていることも事実です。
『迷惑をかけているのではないか』という思いがどうしても拭えないようであれば、信頼のできる上司や同僚に相談し、意見を聞いてみるのもよいでしょう。


 

【解雇には合理的な理由が必要】


法制度上は、会社には労働者を解雇する権利(解雇権)が認められています。このため、体の状態や職場の環境によっては、たとえあなたが仕事を続けたいと希望しても、本意ではない部署に配置換えされてしまったり、解雇されてしまったりすることもあるのが現実です。
ただし、『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする』という労働基準法第18条の2の規定をはじめ、会社による解雇権の行使には一定の制限が課されています。
たとえば、一般的には、がんを含めて、『病気である』という事実そのものは、解雇の理由にはなりません。
しかしながら、病気によって、所定の業務を継続することが困難になると、解雇の合理的な理由とみなされる可能性が出てきます。ただし、その場合であっても、会社は配置転換の可能性などを検討して、解雇を避けるための努力をすべきである、という考え方が、判例によって示されています。
解雇の理由となりうる具体的な条件は、会社やあなたが結んでいる労働契約によっても変わってきます。解雇の要件は就業規則に明記されているので、必要に応じて調べておいた方がよいでしょう。


 

【仕事と治療に関する相談の窓口】


最初にも書きましたが、仕事は、お金の面ではもちろん、自分らしく生きていくためにも、あなたにとって大切な支えになります。
しかし、がんはいのちを左右することもある病気です。仕事を続けることが明らかにあなたの健康を損なったり、治療の妨げとなったりする場合には、どこかで仕事との折り合いをつけていくことも大切です。
仕事に関する悩みや迷いがある時には、おかかりの医療機関の相談室やがん診療連携拠点病院の相談支援センターにいるソーシャルワーカーに相談してみるとよいでしょう。ソーシャルワーカーは、就労や保険に関する様々な制度について専門的な知識を持っています。守秘義務があるため、あなたが話した内容が外にもれてしまうようなことは決してありません。
もしもあなたの職場に産業医がいるのであれば、仕事の状況を理解したうえで病気の相談に乗ってくれる、よい相談相手になってくれると思います。
また、労働基準監督署等に設置されている『総合労働相談コーナー』でも、病気に関係した就労上の悩みを相談できます。


 
参考になるホームページ
(1)国立がん研究センター『がん情報サービス』:病院・相談先を探す
https://hospdb.ganjoho.jp/
がん情報サービスの[相談先・病院を探す]では、全国のがん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院、希少がん情報公開専門病院等の一覧が掲載されていて、さまざまな条件で検索できます。病名やがんの種類、地域や病院の種類、診断や治療の実施状況、小児がん治療後のフォローアップ状況、小児がんの治療方法やセカンドオピニオンの対応状況などから探すことができます。また、成人や小児の相談先・病院一覧を見るでは、相談支援センターの名称や電話番号、病院情報などを閲覧できます。
(2)国立がん研究センター『がん情報サービス』:がんと仕事のQ&A
https://ganjoho.jp/public/institution/qa/index.html
厚生労働省の研究グループの研究成果をもとに作成された冊子「がんと仕事Q&A」第3版のweb版です。診断から復職まで、復職後の働き方、新しい職場への応募、お金と健康保険、家事や子育てなどの章にわけられ、それぞれQ&A方式で情報があります。
冊子PDF「がんと仕事Q&A」第3版は、下記からダウンロードできます。(A4縦サイズ)
https://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/pdf/cancer-work.pdf
(3)厚生労働省:総合労働相談コーナーのご案内
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
厚生労働省のホームページ内の上記のページから、全国の総合労働相談コーナーの連絡先を調べることができます。

 
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