悩み

どうやって、何を目標にして生きていけばよいのか。もしこのまま死んだら自分がやりたいことや思っていることを何もできないと悩んだ。



助言


【不安や焦りがあれば、その支えを探す】


生きる希望や生きがいを持つことは、確かにすばらしいことかもしれません。
ただ、人生にはっきりとした目標をさだめ、それに向けてまっすぐに進んでいくような人は、実際にはむしろ少数派なのではないでしょうか。
元気な時には、『生きる希望や生きがいをことさら意識してはいない』という事実を、私たちはそれほど気にかけたり、問題に感じたりはしません。
ところが、がんという病気にかかると、人生の不確かさや、残された時間に限りがあるという事実を、否が応でも意識させられます。
“はっきりとした生きる希望や生きがいがほしい”というあなたの気持ちは、ある意味では、病気と向き合うことを通じて、あなた自身の心が作り上げた『強さ』の一つと言えるかもしれません。その気持ちがうまく働けば、人生を豊かにすることにもつながることでしょう。
しかし、別の意味では、希望や生きがいへの渇望は、“時間が限られている”という思いからくる不安や焦りの表れなのかもしれません。もしそういった不安や焦りをつらいと感じるのであれば、まずそのことから支えを探していく必要があると思います。


 

【自分の体や病気に関する情報を集める】


人生に対する不安や焦りから生まれるつらさは、自分の体や病気に関する事実をきちんと理解することで、軽くできる場合があります。
まずは担当医とよく話しあってみてくだい。将来の見通し、これから起こるかもしれない症状、そして、それが仮に起こった時にどのような対応を取ることができるか、十分に確認しておきましょう。
また、自分で積極的に情報を集めることも大切です。情報を得るには、インターネット、書籍、患者会など、さまざまな方法があります。
情報を集めるときに注意したいことは、自分のペースに合わせるということです。最初は膨大な情報に圧倒されたり、焦ったりしてしまいますが、自分のペースで収集を進めるうちに、情報を選び、消化して理解するための力が、あなたのなかに自然に育っていきます。
自分の体や病気についてよく知っておくことは、あなたが今感じている、将来に対する不安をやわらげるだけではなく、将来実際に何か症状を経験することが仮にあったときにも、そのショックをやわらげ、冷静に対処することに役立ちます。


 

【時間をかけることも大切】


不安や焦りの原因の一つは、病気によって、自分の将来の姿がうまく描けなくなっていることにあるのかもしれません。
患者さんの中には、人生の主導権ががんに奪われてしまって、自分がただがんに振り回されているだけのように感じるという時期を経験される方もいます。
そんなときには、立ち止まってしまう自分を否定せずに、自然にわきあがってくる思いを見つめる時間を持つことも大切です。濁った水が時間をかけて澄んでいくように、混乱した気持ちの中から、時間の経過によって少しずつ見えてくることもあると思います。
方法や必要な時間は人それぞれ違いますが、とても厳しく、つらい状況になっても、それを受け止めて対処していくことができる力が人には備わっています。
多くの患者さんは、やがて自分の気持ちを整理し、人生を再び歩みはじめます。
病気は人生の大きな出来事ですが、あなたの中には、変わらない部分が必ずあり、時間をかければそれに気づくことができるはずです。
病気になることで、自分が本当に大事にしているもの、必要としているものに改めて気がついた、という患者さんもいらっしゃいます。


 

【ノートに書いて気持ちを整理する】


自分の気持ちがうまく整理できず、何をするべきか分からなくなった時には、ノートに思いを書き出すことが助けになることもあります。
長い文章ではなく、箇条書きにした方が書きやすいと思います。心に浮かぶままに単語を並べていくだけでも、気持ちが晴れることもあります。
何を書いてよいか分からなければ、たとえば、次のようなことを考えてみてはどうでしょうか。
○ 自分にとって大切な人、こと、物
○ 嬉しかったり、楽しかったりしたこと
○ 自分にとって望ましい状態、どうすればそれに近づいたと感じられるか
○ つらいと感じていること、不安に思っていること
○ 病気になって変わったこと、変わらないこと
○ これから自分の力で変えられること、変えられないこと
ノートは書いた量が一目でわかるので、あとで振り返った時に、“自分はこれだけ考えを積み重ねてきたんだ”という自信にもつながります。


 

【誰かに話して気持ちを整理する】


周りの誰かに話を聞いてもらうことも、気持の整理に役立ちます。
もやもやとした思いを口に出すことで、気づいていなかった自分自身の思いに気づくこともあります。
相談する相手は、信頼でき、あなたの話を受け止めてくれる人であれば、家族や友人、職場の同僚など、身近な人でかまいません。
身近な人の協力を得ることが難しいときには、おかかりの医療機関の相談室かがん診療連携拠点病院の相談支援センターにいる相談員に相談してみるとよいでしょう。
相談員には守秘義務があり、あなたが話した内容を外にもらすことは決してありません。また、相談のプロですので、話している途中で、あなたがたとえ動揺したり、緊張したりしても、あなたの気持ちに寄りそってくれるでしょう。
また、不安で眠れない日が続いたり、落ち込んでいる気分が長引いたりする時には、精神科医、心療内科医、心理療法士などこころの専門家に相談してみることも大切です。
誰かに話を聞いてもらったり、助けを求めたりできるということは、あなたの『弱さ』ではなく、『強さ』であると考えてください。


 
参考になるホームページ
国立がん研究センター『がん情報サービス』:相談先を探す
https://hospdb.ganjoho.jp/
成人や小児の相談先・病院一覧(がん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院)が掲載されています。

 
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