悩み

がんと診断されて、何日も眠れない日が続いた。



助言


【がんの診断は誰にとっても強い衝撃です】


がんと診断されることは、誰にとっても衝撃的な出来事です。
患者さんの中には、「その瞬間頭が真っ白になってしまって、その後先生が何を話したのか全然覚えていない、どうやって自宅に帰ったのかもわからない」、「呆然として何が何だかわからない」と話される方もいます。
混乱のなかで、気持ちが落ちこんだ状態が続き、部屋に引きこもってしまったり、誰とも話したくなくなったりすることもあります。
ご家族や親しい人々の何とか支えたいという思いからかけた言葉も、時には白々しく感じ、“誰にも自分のつらさはわからないのに、簡単なことを言うな!”といった怒りの気持ちがわくこともあります。
同時に、どうなるのかわからない未来への漠然とした不安が次々と頭をめぐります。
こういうときは、こころがとても過敏になっていますから、周囲の何気ない言葉や振る舞い、視線などに対して、悪い方へと考えがちで、自分だけが孤立してしまったような感覚にもなります。


 

【つらさを抱え込まないようにしましょう】


とてもつらい時、自分の気持ちを受けとめてくれる人、家族や何でも話せる友人に、不安に思っていることや揺れ動く思いを聴いてもらうことも、気持ちを楽にします。
一人で、つらさを抱え込まないで、周囲の人に話してみましょう。泣いてしまってもかまいません。
口にしなくても、ふっと自分を心配し気遣う周囲の人々の思いが感じられた時、一人ではないと感じて温かい気持ちになれたり、そんな時間がほんの少しでも気持ちを楽にしてくれると思います。
こころが落ち着いてくるまでの期間は人によって異なりますが、多くの場合、2~3週間くらいすると、少しずつ具体的なことを考えたり、気持ちが落ち着いてきます。
これは、こころがすっかり落ち着きを取り戻したということではなく、まだ不安定ではありますが、その中でも少しずつ変化が出てくるという意味です。
この時期になると、周囲の人々の自分へのいたわりや、自分を必要としてくれる気持ちが少しずつ素直にこころの中にも入ってきます。


 

【正しい情報を知ることで、不安が軽くなることもあります】


自分の体や将来の生活に対する漠然とした不安は、病気に関する事実をきちんと理解することで、軽くできる場合があります。
まずは担当医とよく話しあってみてください。家族や信頼する友人などと一緒に話を聞くとよいでしょう。
将来の見通し、これから起こるかもしれない症状、そして、それが仮に起こった時にどのような対応を取ることができるか、十分に確認しておきましょう。
その上で、自分で積極的に情報を集めることも大切です。情報を得るには、インターネット、書籍、患者会など、さまざまな方法があります。
情報を集めるときに注意したいことは、自分のペースに合わせるということです。最初は膨大な情報に圧倒されたり、焦ったりしてしまいますが、自分のペースで収拾を進めるうちに、情報を選び、消化して理解するための力が、あなたのなかに自然に育っていきます。
自分の体や病気についてよく知っておくことは、あなたが今感じている、将来に対する不安をやわらげるだけではなく、将来実際に何か症状を経験することが仮にあったときにも、そのショックをやわらげ、冷静に対処することに役立ちます。


 

【こころの専門家に相談する】


がんにかかった方の中にも、無事に治療を終えて、社会復帰を果たされる方はたくさんいらっしゃいます。そして、医学の進歩とともに、その数は年々増えています。
しかし、がんが命を左右することもある重大な病気であるということは、やはり事実です。再発や転移に対する恐れや、これからの生活に対する漠然とした不安を感じることは、とても自然なことだと思います。
あなたの場合、眠れないほどの不安や恐怖をお感じになっているということですが、これはこころがぎりぎりまで張り詰めた状態にあるという、一種のしるしだと思います。日常の生活にも少なからず影響が出ていることでしょう。
もし、気持ちの落ち込みから抜け出せない日が続くようであれば、一度、こころの専門家(精神腫瘍科医、心療内科医、精神科医、臨床心理士、心理療法士、リエゾンナースなど)と話してみることも大切です。
こころの専門家をいきなり訪ねるのはちょっと敷居が高いと感じたり、どこに行けば会えるか分からなかったりする時には、まずは、担当医や、『相談支援センター』『医療相談室』の相談員に相談してみるのもよいでしょう。
体が大変なときには担当医や看護師に支えてもらいます。同じように、こころがつらいときにも、専門家の手助けを少し借りることで、どうしていけばよいのか、自分なりの答えがみつけられることがあります。
自分の気持ちをほかの人に打ち明けて、助けを求めることができるのは、あなたの弱さではなく、強さであると考えてください。


 
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