悩み

世間一般に「がんイコール死」のイメージが大きいので入院の事実は話しても病名は言えなかった。友人との会話で冗談に「がんじゃないだろうか」と言われると、すごく傷つく。知らないから言ってるんだろうけど冗談で言うことじゃないと思った。



助言


【がんの話題と気持ちのコントロール】


多くのがん患者さんは、がんになったことで周囲の人の言葉や態度にとても敏感になってしまうことがあります。これは、悩みにも書かれていたように「がんイコール死」、「がんイコール苦痛」というマイナスの社会的なイメージが今でも根強く残っていることも関係しているのかもしれません。一方で、現在は、男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんになるという状況で、がんはとても身近な病気でもあります。それが、お友達のなかで『病気で入院=がん』という連想になったのかもしれません。
これまで、日常生活の中で、『がん』という話題が全くないということは少ないと思います。家庭や職場、友人などと健康の話をしているときや体調が悪いとき、テレビ等の話で、『がん』の話題がでることがあります。
ただ、自分ががんになると、同じ言葉がとてもこたえ、無責任な言葉、無配慮な言葉として怒りや悲しみになってしまうのも誰でも起こることだと思います。

お友達がどういうつもりでそういう発言をしたのかは、推し量ることはできませんが、周囲の人々の言葉やふるまい、視線などのすべてをふせぐことはできません。これからも、同じようなことが起こることもあると思います。
そんなときに、自分なりに気持ちをコントロールする方法を考えておくと、こころを落ち着かせる助けになるかもしれません。


 

【信頼できる人、大切な人には伝えましょう】


病気を伝えないこと、伝えること、それぞれ利点と難しい点があります。誰に、どこまで、どのタイミングで話すかは、よく考えて、自分自身で決めていきましょう。
がんであることを伏せて、できるだけこれまで通りの生活スタイルを維持していくことは、あなたの気持ちによい意味での緊張感をもたらすかもしれません。また、近年の入院期間の短縮や外来での抗がん剤治療の普及も、あなたの希望にそった計画の手助けになってくれるかもしれません。
ただし、その一方で、体調が思わしくない時には、自分の体のつらさに加えて、『元気であるふりをしなければならない』というこころのつらさも同時に背負ってしまうことになる可能性があります。
考えておかないといけないことは、がんの治療は長期戦だということです。時には、治療のために、職場や日頃のつきあいの輪に、何週間も顔を出せないこともあるでしょう。病気の性質上、周囲に自分ががんであることを伏せ続けることが難しくなる可能性は、すぐにはなくなりません。
一般的には、いざという時のことにあらかじめ備えておくという意味でも、身の周りにいる本当に信頼できる人や、自分にとって大切な人には、病気について話しておいた方がよいことが多いようです。
伝えておくことで、その人たちとの信頼関係がいっそう深まり、いざという時にあなたを支えてくれたり、守ってくれたりする、ということもあると思います。


 

【自分のがんを周りの人に伝えるとき】


話す相手をきちんと選んだら、何を、どこまで伝えるか考えましょう。伝えたいことは、ノートに書いてみると、説明するときだけでなく、あなた自身が自分の病気について情報や気持ちを整理することにも役に立つと思います。
書いたことは、一度にすべて伝える必要はありません。時々職場や会合を欠席することになること、軽くはない病気にかかったこと、入院することなど、あなたが話せることから、話せるスピードで、必要であれば何度かに分けて伝えてよいと思います。
病気のことを実際に相手に伝える時に、忘れてはならないことがあります。
それは、あなたが病気のことを伝える際に緊張するのと同じように、伝えられる側もまた、緊張を感じることが少なくないということです。
たとえ相手があなたのことを大切な人と考えて、支えたいと思っていても、その場では戸惑ったり、目をあわせられなかったり、言葉につまったり、安易な励ましをしてしまったりするかもしれません。
しかし、時間はかかるかもしれませんが、相手はいずれ、がんという病気の有無に関わらず、あなたがあなたであることには変わりはないということに気づくはずです。
がんという病気のためにこころがとても敏感になっているあなたには、相手の反応の一つひとつに傷ついてしまうかもしれません。ただ、そこでもう一度、あなた自身が選んだ相手を信じて、時間をかけることが大切なのだと思います。


 
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