悩み

主治医から「再燃の恐れあり、その場合、(ホルモン注射と内服薬だけでは)打つ手なし」と言われた時、暗たんとした。



助言


【前立腺がんのホルモン療法】


再燃とは、病気の進行が止まったり、軽くなったりしていたものが、また進行し始めることを言います。
前立腺がんのホルモン療法を始めるとPSA(前立腺特異抗原と呼ばれる腫瘍マーカー、血液検査で測定可能)値が下がり、治療の効果がみられると思います。しかしホルモン療法で、全てのがんが消えるわけではないので、いずれ治療の効果が小さくなってきます。この期間については、最短で数ヶ月、最長で10年以上と、人によってかなり幅がみられます。
定期的に通院して治療の効果や副作用を確認することで、患者さんの状況にあった適切な治療の検討ができます。別の治療を検討するタイミングや治療内容は、それぞれの患者さんの病気の状況、これまでの治療の効果などによって異なります。


 

【混乱しているこころと頭を整理する】


混乱しているこころと頭を整理するために、最初に説明内容をどの程度理解できたか、わからない点、疑問点を整理してみましょう。
一人で聞いた時には、一度少し時間をおいて(たとえば、当日は混乱しているようであれば、それ以上考えず、翌日考えるなど)、説明を受けた内容を書き出し、整理してみましょう。あるいは、口に出し、ご家族に説明しても良いでしょう。人に説明することは、ご自分の頭の整理にもなります。

治療法については、

○期待できる効果
○副作用
○起こりうる合併症
○その他の治療法と比べての利点と欠点

などを理解することが大切です。
頭を整理し、わからない点、疑問点があれば、それも書き出してみましょう。


 

【前立腺がん治療の利点・欠点】


早期の前立腺がんの場合、手術、放射線治療、ホルモン療法、無治療経過観察(待機療法)とさまざまな治療の選択肢があります。
ここでは例として、前立腺全摘術とホルモン療法について利点と欠点を整理してみます。ただし、一般的な内容になりますので、それぞれの患者さんの病気の状態や治療に関することは、担当医にご確認ください。

○前立腺全摘術の利点
がんが前立腺内に限局しているならば、がんを取り除き、完全に治すという目標に、最もかなった治療法と言えます。

○前立腺全摘術の欠点
手術の合併症として、排尿障害(尿失禁、頻尿、尿の勢いの低下)や性機能障害などがあげられます。排尿障害については、ほとんど生活の妨げとはならない場合が多いと言われています。

○ホルモン療法の利点
高齢者でも比較的安全に実施でき、1~3ヶ月に一度の外来通院で、治療を行うことができます。ホルモン剤は、男性ホルモンの分泌を抑えたり、男性ホルモンの影響ががん細胞に伝わらないように働きます。

○ホルモン療法の欠点
ほとんどの場合、再燃がみられます。性機能障害や、更年期症状に似たような症状(顔や体の急なほてりや発汗、疲労感、動悸など)、肥満や関節痛などの症状があらわれることがあります。


 

【治療を決めるとき考えること】


治療の選択を検討するときには、その治療の利点(その人自身にとって、あるいは病気をコントロールする点で良いこと)だけではなく、欠点(副作用、危険性、合併症の可能性、生活への影響のことなども含めて、その人自身にとって良くないこと)も含めて考える必要があります。
この利点、欠点というのは、“自分自身にとって”ということなので、たとえば『生活の質』という面を考えたときは、その人自身がどういう生活を望んでいるかによって、総合的な利点・欠点が変わることもあります。
また、治療は、どんながんの、どんな時期でも効果があるわけではありません。利点が大きな治療でも、その人のがんには適応にならない場合もあります。
医師は、がんの進み具合や臓器の状態、また患者さんのからだの全体の状況などを十分考慮したうえで、可能な治療方法を説明します。
大事なのは、いろいろな側面から考え、検討して、実際に治療を受ける自分自身で決めることだと思います。


 
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