悩み

もしまたがんになった場合、痛みや苦しみがなく心安らかに死を迎えたいと思う。



助言


【再発の不安に対処するために】


あなたはきっと、過去にがんを体験され、その治療が一通り済んでいる状況ではないかとお察しいたします。
がんの再発については、抗がん剤を使うことで危険性を下げたり、定期的に医師の診断を受けることで早期に発見し、治療を始めたりすることができます。
その一方で、がんの再発そのものを完全に防ぐことができる薬や食べ物、生活習慣、気持ちの持ち方などは、現在まだ見つかっていません。
この事実は、確かに多くの患者さんに不安をもたらします。ただ、その不安とどこかで折り合いをつけて、自分らしい生き方を探し出すことができた患者さんもたくさんいます。
ひとつ、ヒントになるかもしれないのは、病気に関して、『自分で変えられること』と、『自分では変えられないこと』をノートに書き出して、整理してみることです。
整理ができたら、『自分で変えられること』に打ち込んでみましょう。『自分では変えられないこと』を思い悩むことに使っていたエネルギーも、できるだけそちらに回すようにしてみてください。
もし、気持ちの落ち込みから抜け出せない日が続くようであれば、精神科医、心療内科医、心理療法士などのこころの専門家や、『相談支援センター』や『医療相談室』の相談員と相談してみるのもよいでしょう。


 

【痛みや苦しみをやわらげる『緩和ケア』】


痛みを含め、患者さんが感じているつらさを総合的にやわらげるサポートがあります。
このような総合的なサポートのことを、緩和ケア(緩和医療も緩和ケアとほぼ同じ意味です)と呼びます。
緩和ケアを受けると、薬をはじめとするいろいろな方法で、痛みや不快感を取ったり、軽くしたりすることができます。
がんが原因となる痛みをやわらげる治療の基本となるのが、『WHO方式がん疼痛治療法』です。WHO方式がん疼痛治療法は、一定時間ごとに痛みの強さに応じた薬を飲むことを基本とする治療法ですが、適切に実施すれば、8割から9割の患者さんで、がんの痛みを取ることができると言われています。
さらに、WHO方式がん疼痛治療法でやわらげることができない痛みや苦しみに対しても、さまざまな治療方法が工夫され、着実に成果を上げつつあります。
『緩和ケア』は、がんと診断されたときから、いつでも受けることができます。たとえ病気が進んでも、体の痛みをやわらげることは可能です。


 
参考になるホームページ
(1)日本ホスピス緩和ケア協会
https://www.hpcj.org/index.html
サイドメニューに、『ホスピス緩和ケアをご利用の方に向けた情報』があり、『ホスピス緩和ケアQ&A』(ホスピス緩和ケアに関することをQ&Aで情報提供しています)、『ホスピスってなあに?』(冊子PDF版)などホスピス緩和ケアに関する情報や、ホスピス緩和ケアの解説やホスピス緩和ケアを受けられる医療機関一覧(ホスピス緩和ケア病棟、緩和ケアチーム、在宅ホスピス緩和ケア)の情報があります。
(2)国立がん研究センター『がん情報サービス』:相談先・病院を探す
https://hospdb.ganjoho.jp/
がん情報サービスの[相談先・病院を探す]では、全国のがん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院、希少がん情報公開専門病院等の一覧が掲載されていて、さまざまな条件で検索できます。病名やがんの種類、地域や病院の種類、診断や治療の実施状況、小児がん治療後のフォローアップ状況、小児がんの治療方法やセカンドオピニオンの対応状況などから探すことができます。また、成人や小児の相談先・病院一覧を見るでは、相談支援センターの名称や電話番号、病院情報などを閲覧できます。
(3)緩和ケア.net
https://www.kanwacare.net/
緩和ケアに関する総論的な情報、痛みや痛み以外の症状、緩和ケアの医療費に関する情報、こころの変化やつらさへの対処法などの情報が掲載されています。

 

【どうしてもつらさをやわらげられない時には、鎮静を行います】


薬や治療法の進歩によって、適切な『緩和ケア』が行われれば、ほとんどのがん患者さんのつらさ(からだのつらさ、こころのつらさ)をやわらげることができるようになりました。
ただ、割合そのものは少ないのですが、現在有効と考えられるどんな方法を使っても、つらさを十分にやわらげることができず、患者さんが“耐えられない”と感じるような状況が続いてしまうこともごく稀に起こります。
どんなに手を尽くしてもつらさを取ることができず、死がそれほど遠くない時期に迫っていると予想される時には、患者さんとご家族の意思を十分に確認した上で、薬を使って患者さんの意識を低下させて、つらさをやわらげます。このようなつらさのやわらげ方を、『鎮静』と呼びます。
『緩和ケア』の現場で行われるこのような『鎮静』は、つらさをやわらげることを目的とするもので、命を縮めたり、奪ったりすること自体を目的とする『安楽死』とは似て非なるものです。(なお、『安楽死』は日本では認められていません。)
大切なことは、適切な『緩和ケア』を受けることです。適切な『緩和ケア』を受けることができれば、つらさをやわらげることと引きかえに、命を諦めなければならないような状況は避けられます。


 
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