悩み

抗がん剤で激しい腹痛と下痢で体重も減り、苦しみながら死んでいくのかと思い、不安だった。



助言


【副作用の状況を伝え、対応していきましょう】


まず一人で思い悩まず、担当医や看護師に腹痛や下痢の状況、不安に思っていることを伝えましょう。

抗がん剤の副作用で起こる下痢の原因は、大きく2つあります。
一つは、抗がん剤で副交感神経が刺激されて、腸管運動が亢進したり、水分吸収阻害が起こり、下痢が起こります。このタイプは抗がん剤投与開始後24時間以内に起こり、多くの場合持続時間は短く一過性のものです。
もう一つは、抗がん剤治療によって、正常な細胞のなかでも細胞分裂の活発な消化管細胞(口、腸の粘膜など)、骨髄細胞、毛母細胞などに影響が出やすいためです。腸の粘膜が傷害され、下痢が起こります。この場合、抗がん剤を投与して数日後くらいから下痢が起こってきます。

抗がん剤治療の際、副作用症状を少しでも緩和するために、お薬を使ったり様々な対応策が行われます。適切な対処をとり副作用を最小限にするためにも、副作用のことで悩まれることがあれば、きちんと担当医に伝えましょう。
副作用をやわらげるためのお薬を例にすると、吐き気をやわらげるお薬もいろいろな種類がありますし、下痢や便秘の時は、その症状にあわせたお薬などで対応します。それ以外にも、症状にあわせて、できるだけ副作用を軽減するための対応をしていきます。
また、患者さん自身もその副作用を少しでも軽減するためにできることがあります。自分なりの工夫が副作用の軽減につながることも少なくありません。


 

【自分で行える自分のためのケアを実践しましょう】


1. 自分の受ける抗がん剤治療について、副作用について理解する
抗がん剤治療の副作用は、それぞれの薬によって起こってくる副作用が異なり、同じ薬であっても、患者さんによって副作用の程度などが異なります。また、副作用によって出てくる時期が違いますし、続く期間も異なります。
抗がん剤治療を受けている自分の身体が、治療によりどのように変化するか、自分の場合、どういう副作用が、いつ頃でて、いつ頃まで続くのか等、メモなどとりながら整理してみましょう。
治療によって起こる体調の変化をあらかじめ理解しておくことで、予防策もたてやすくなりますし、副作用がやわらいでくる時期の目安を知ることで、安心感にもつながります。
下痢や腹痛などの症状がある場合、排便の状況や食事の摂取状況を自分でもよく把握しておく必要があります。抗がん剤治療を開始する前と、開始してからの変化、治療を続けていく中での排便状況や食事状況の変化をまず1回書き出してみましょう。表の形にするとわかりやすいかもしれません。
下痢といっても、やわらかめだけれど形はある下痢、水みたいな下痢など様々です。しぶり腹のようにちょっとずつの下痢もありますし、水みたいな下痢がたくさんでることもあります。
また、食事と下痢の関係にも注目してみましょう。食事により、下痢になりやすいメニューがあれば、それは下痢の副作用が出ている時期は避けるようにしてみましょう。

2. 副作用など変化があったことやつらいことを担当医や看護師に伝える
抗がん剤の副作用を軽減したり予防するためのサポートを得るためにも、上記の1.で整理した内容を担当医や看護師等に伝えましょう。伝えることで、良い対応策をとることが可能になったり、アドバイスなどを受けることができます。
伝えるときは、
◎ いつ頃 点滴を終わって○時間くらいしてからとか、お薬を飲み始めて○日後くらいからなど
◎ どういう症状 水みたいな下痢、しぶり腹、下痢の前におなかにさしこむような痛み、おなかがぐるぐるいっているなど
◎ 下痢は何回くらいか
◎ 食事や水分はとれているか
◎ 体重の変化
などをあらかじめメモなどで整理しておいて伝えるとよいでしょう。メモをうまく利用すると、外来などの短い診察時間でも簡潔に相手にわかりやすく伝えることができます。

3. 自分でできる副作用対策を行ってみる
副作用を予防したり、できるだけやわらげたり、副作用が強くなるのを防ぐためにできることがあります。できる範囲で、自分の生活に合った調整や工夫を行ってみましょう。いくつかの方法を試してみることで自分にあった方法がきっと見つかるはずです。


 

【下痢や腹痛があるときの食事について】


まず、抗がん剤治療後、いつ頃下痢や腹痛が起こりやすいのかご自分の状況を把握しましょう。
下痢や腹痛があるときには、腸への刺激や負担を避けるよう、食事に気をつけ、消化の良い食事を少しずつとるようにしましょう。油っぽい料理や糖分を多く含む料理、お菓子などは腸管に負担をかけやすく、また食物繊維を多く含む生野菜は、腸のぜん動運動を活発にして下痢や腹痛などの症状を悪化させるおそれがあるので、なるべく控えましょう。低脂肪でタンパク質が豊富な食品をとるようにしましょう。

◎ 低脂肪でタンパク質が豊富な食材
たまご(1日1個)、豆腐、鶏肉、はんぺん、白身魚など
◎ 控えたほうがよいもの
○ 繊維が多く固いもの ごぼう、れんこんなど
○ 油っぽい料理 揚げ物、うなぎの蒲焼きなど
○ 腸内で発酵しやすいもの ガム、豆類、キャベツ、さつまいも、栗など
○ 刺激物 香辛料、アルコール、炭酸飲料、カフェイン飲料 など

また、下痢の症状がひどいときには、脱水症状が起こることがあります。また、下痢によって水分と一緒にカリウムも出てしまいやすいので、室温程度の水分(熱すぎたり冷たすぎたりすると腸を刺激しやすくなります)やカリウムを十分にとるようにしましょう。
◎ 水やお茶だけではなく、電解質(ミネラル)を含んでいるスポーツ飲料などもとりましょう。
◎ スポーツ飲料は、常温に近いものを少量ずつ回数を多くしてとりましょう。
◎ スポーツ飲料は1/2くらいに薄めたほうがそのまま飲むより吸収がよくなります。
◎ 牛乳やみかんなどの柑橘系ジュースは、下痢や嘔吐を誘発しやすいので控えましょう。


 
参考になるホームページ
SURVIVORSHIP.JP がんと向き合ってともに生きること
https://survivorship.jp/
『SURVIVORSHIP.JP』は、静岡がんセンターと大鵬薬品工業(株)との共同研究の成果による情報支援ツールの一つで、治療によって生じるつらさをやわらげるくふうなどの情報提供を行うサイトです。
◎抗がん剤・放射線治療と食事のくふう
抗がん剤や放射線治療中の食事に役立つメニューやレシピを副作用症状に合わせて検索、閲覧することができます。176品のレシピが掲載され、ジャンル別絞り込みでは、主食(米、パンなどの種類別)、主菜(肉、魚などの種類別)、副菜、汁物、デザートと飲み物などで絞り込みもできます。
◎抗がん剤・放射線治療と脱毛ケア
治療が体毛に及ぼす影響とその対応で構成され、かつらのつけ方やお手入れの方法、スカーフなどの巻き方は、動画で確認できます。
◎抗がん剤治療と副作用対策
抗がん剤治療の概要や吐き気・おう吐、下痢、口内炎など個別の副作用症状とその対応などについて、わかりやすいアニメーションの動画でみることができます。
◎抗がん剤治療と眼の症状
眼の副作用が起こる可能性の高い抗がん剤の種類やその症状について確認できます。
◎抗がん剤治療と皮膚障害
がんの薬物療法(従来型の抗がん剤や分子標的薬など)による発疹、爪の変化など皮膚への副作用に対する心構えや具体的な対処法などについて紹介しています。
◎抗がん剤治療と末梢神経障害
がんの薬物療法(従来型の抗がん剤や分子標的薬など)による手先・足先のしびれや感覚が鈍いなど末梢神経への副作用に対する心構えや具体的な対処法などについて紹介しています。
◎抗がん剤治療と口腔粘膜炎・口腔乾燥
抗がん剤治療による口腔粘膜炎・口腔乾燥について覚えてもらいたいこと、やわらげるためのケアについて紹介しています。
◎放射線治療と口腔粘膜炎・口腔乾燥
口の周辺に放射線治療を行う際に起こる口腔内トラブルのうち、口腔粘膜炎と口腔乾燥に重点を置き、その「つらさ」をやわらげるためにできること、療養生活を送る上で覚えておいてもらいたいことを紹介しています。
◎抗がん剤治療による骨髄抑制と感染症対策
抗がん剤治療によって起こる「骨髄抑制」の症状や治療法、日常生活での注意点についてご覧いただけます。
◎がんで「こまった」がんを「知りたい」
「胃がんにかかったご主人を支える奥さまのブログ」という架空のストーリー仕立ての設定で、胃がんの患者さんやご家族の悩みにそって、助言も合わせてみることができます。
◎がん手術後のリンパ浮腫(ふしゅ)
上肢リンパ浮腫(ふしゅ)・下肢リンパ浮腫(ふしゅ)それぞれについて、概要や対処法について、映像と音声で見ることができます。
◎胃を切ったら~胃切除後障害と上手に付き合うために~
胃切除後におこってくるダンピング症候群、逆流性食道炎などの障害とその対策、ご自宅での療養生活についてなど、静岡がんセンターで実施された患者・家族集中勉強会での講演のビデオをみることができます。
◎乳がん術後の下着・パッドのアドバイス
乳がん術後の下着・パッドについて、選び方や身近にある物を工夫していくコツや知識を紹介しています。
などがあります。
◎乳房再建術後の経過とケア
乳房再建術の概要と手術後の日常生活をどのように過ごしたらよいかなどの情報があります。
◎がんの脳転移と日常生活
日常生活の中で、脳転移の症状と、どのように付き合っていけばよいかなどの情報があります。

 
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