悩み

抗がん剤で爪が黒くなってきて、心配した。



助言


【抗がん剤副作用の皮膚障害】


抗がん薬(抗がん剤)の副作用の一つである皮膚障害には、手や足の裏、指先などの皮膚がひりひりしたり、ちくちくする、知覚過敏になる、ほてり感、赤い斑点になる(紅班)、むくんだり赤く腫れるなどが起こる『手足症候群』や、皮膚の色が黒ずむ色素沈着、爪の変形や黒ずみ、爪にスジが出るなどの爪の変化などがあります。

『手足症候群』は、しびれや皮膚知覚過敏などを伴う抗がん薬や分子標的治療薬による副作用の一つです。どのようにして起こるのか(発生機序)に関しては、皮膚基底細胞やエクリン汗腺への直接作用などがあげられていますが、まだはっきりはしていません。
『手足症候群』を起こす代表的な抗がん薬は、(1)ティーエスワン(商品名)、カペシタビン(一般名)など代謝拮抗薬などの抗がん薬、(2)ネクサバール(商品名)、スチバーガ(商品名)、スーテント(商品名)などのマルチキナーゼ阻害剤です。それぞれで症状が出てくる時期や出現形態が違うので注意が必要です。


 

【爪のケア】


抗がん剤治療による皮膚障害は、日頃から、皮膚や爪を守るためのケアを意識的にすすめることが大切です。治療が全て終了しても回復するまでに時間がかかりますから、皮膚や爪のケアは回復するまで続けましょう。

皮膚や爪の症状をできるだけ予防するためには、清潔・保湿・保護(刺激を避ける)の3点が重要です。
◎清潔をこころがける
家事や仕事など、あるいは日常生活の中で、手や足など皮膚や爪が汚れたら、きれいに洗いましょう。手や足に汚れが残っていると、それが刺激になり、症状が悪化しやすくなります。石けんは、よく泡立てて使い、流水でていねいに流すようにしましょう。
◎保湿につとめる
皮膚が乾燥すると症状が悪化するので、保湿につとめましょう。保湿用のクリームは、病院からの処方剤以外でも、市販のものを使用してもかまいません。ただし、アルコールが入っているものは乾燥を助長させるので、使用しないようにしましょう。保湿剤は、1日5回以上、塗るようにしましょう。水仕事の後、手洗いや入浴後は、水分を押さえるようにしながら拭き(こすらない)、皮膚がしっとりしているうちに、すぐ塗るようにしましょう。皮膚だけではなく、爪全体にも塗るようにします。保湿剤を使用した後に、綿の手袋や靴下などで皮膚を保護するとよいでしょう。
◎皮膚や爪を保護する(刺激を避ける)
紫外線による刺激も症状を悪化させます。外出時は、日傘、帽子、長袖などで肌の露出を避けて、なるべく直射日光を避けるようにしましょう。また、日焼け止め(アルコールがはいっているものは刺激になるので避ける)などを用い、紫外線による刺激を避けるようにしましょう。けがや虫刺されにも注意が必要です。
きつい靴や硬い靴、体重が一点にかかりやすいパンプスなどは症状を悪化させるので、避けるようにします。サンダルも足先がカバーできないので履かないようにしましょう(ただし、爪の状況でサンダルを履く必要がある場合は、素足ではなく綿の靴下をはくようにします)。
熱いお湯は皮膚などの乾燥を助長させるので、入浴はぬるま湯で長風呂にならないように気をつけましょう。体を洗うときは、ナイロン製のボディタオルは刺激になることがあるので、綿素材のものを使うようにしましょう。
家事などの水仕事の時は、薄い綿の手袋をした上からゴム手袋を使うようにしましょう。
長時間のジョギングや歩くことは足裏に負担をかけすぎ、症状が悪化することがあるので様子を見ながら行いましょう。

爪のケアのための日常生活での注意点には、以下のようなものがあります。
◎ 薄い綿の手袋や靴下で、爪を保護しましょう。
爪に亀裂が入ったり変形したりしているときは、気づかないうちにタオルなどにひっかけて爪がはがれてしまうことがあります。お風呂上がりなどは、そっと押し当てて水分をとり、また日常生活では、柔らかい綿の手袋や靴下で保護しましょう。
爪が伸びていると、ひっかかる原因にもなりますから、爪は伸ばしすぎないように注意し、爪がもろくなっているときは爪切りではなく爪ヤスリを使うようにしましょう。また爪を切るときは、爪に負担をかけないように何回かにわけて切っていきましょう。
◎ 爪の保護:マニキュアや液体絆創膏
爪の表面がでこぼこしたりしていると、ひっかかったり傷をつけやすくなります。マニキュアは、割れなどから爪を守る役割も果たせます。ただし、とるときに使用する除光液はアルコールが入っていて刺激になることがありますのでなるべく刺激の少ないものを選びましょう。
液体絆創膏は、さかむけやひびわれに使うことがあります。これも、表面を保護する役目があります。使用する際は、アルコールの入っていないタイプを使用しましょう。


 
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