悩み

ひとりで病院へ行ったときにがんと告知され、大きなショックを受けたことを覚えている。がんイコール死というのが頭にあり、もっと違う告知の仕方があるのではないかと思った。



助言


【がん告知による衝撃】


突然がんと告げられ、とてもつらい思いをされたことと思います。
頭が真っ白になり、医師の話は耳を素通りし、立ち上がれるのか、歩けるのかさえわからなくなるほどの衝撃だったのかもしれません。『ひとりで病院に行ったとき』とあり、あなたはそのとき、あなたが信頼し心を許せるご家族が“今ここにいてくれたら”と強く願われたのかもしれません。

最近では、がんを告げられるなどの悪い知らせは、患者さんにとって大きなストレスになることが注目されるようになってきました。そこで、告げる医師の側でも、患者さんのこころの状態を理解したり、コミュニケーションについて学ぶ研修会やトレーニングが行われるようになってきました。また、がんと告げられた後の患者さんの心のケアを行っていく試みも行われるようになってきています。

ただ、告知の仕方に関しては、すべての人が同じように望まれている訳ではありません。医師の話し方では、「淡々と話されたことで、こちらも冷静に聞くことができた。」と言う方もいれば、「もっと患者の気持ちに配慮したいたわりのある話し方をしてほしい。」という方もいます。ご家族が一緒の方が心強いという方もいれば、自分のことだからまず自分だけで聞いておきたいという方もいらっしゃいます。告知後も、看護師に一言「大丈夫ですか。」と声をかけられてうれしかったという人もいれば、放っておいてほしいという方もいます。

告知の時のつらい感情は忘れられるものではないかもしれませんが、これから何をするかを考えていきましょう。
◎告知を一人で聞いて、衝撃が強くそのまま家に帰られそうにないときには、少し気持ちが落ち着くまで待合室か静かで落ち着ける場所で座って休みましょう。その際、看護師にショックで気持ちが落ち着かないことを伝えてもよいでしょう。もし場所があれば静かな落ち着いた場所に案内してくれるかもしれませんし、あなたがつらい思いをしていることを知り、今後もあなたが必要なときに手助けをしてくれるかもしれません。
◎病院に相談室があるときには、相談員に気持ちを話してみてもよいでしょう。気持ちを言葉にだすことで、少し気持ちが楽になることもあります。
◎もし、ショックで医師の説明をほとんど覚えていないとか、分からないことがあるときなどは、もう一度外来を受診し時間をとってもらって説明を聞きましょう。そのときには、できればご家族やあなたが信頼できる人と一緒に説明を聞きましょう。二人で聞いた方が心強いこともありますし、お互い聞き漏らしたことを後で確認しあうこともできます。
◎告知後こころが落ち着いてくるまでの期間は人によって異なりますが、2~3週間くらいすると、少しずつ具体的なことを考えたり、気持ちが落ち着いてきます。これは、こころがすっかり落ち着きを取り戻したということではなく、まだ不安定ではありますが、その中でも少しずつ変化が出てくるということです。
この時期になると、周囲の人々の自分へのいたわりや、自分を必要としてくれる気持ちが少しずつ素直にこころの中にも入ってきます。


 

【こころが不安定な状態が続くときは心の専門家もサポートしてくれる】


不安定なこころの状態が続くときには、一度こころの専門家に相談してみるという方法があります。
こころが不安定で、他には何も考えられなくなった、何事にも集中できない、誰とも話したくない、あるいは毎日夜眠れない、食欲がない、そういった症状が続くようなときは、担当医やこころの専門家(精神腫瘍科医、心療内科医、精神科医、臨床心理士、心理療法士、リエゾンナースなど)に相談してみてください。気持ちを落ち着けるお薬を飲んだ方がいい場合もあります。

こころの専門家というと、抵抗を感じる方もいらっしゃると思いますが、これは、がんという病気にかかったことでのこころの悲鳴だと思います。がんという病気は、それほど大きな衝撃で、激しくこころを不安定にさせたりするものだということになります。こころの問題はがんにかかった多くの方が経験することです。
がんと向き合うとき、からだのほうは、担当医がサポートしてくれますが、こころの方は周囲の人とともに、サポートしてくれる専門家に少し頼ってみることで、どうしていけばよいか、自分なりの答えがみつけられることがあります。


 
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