【がんが進んでも、つらさをやわらげることは可能】
がんという病気については痛い、苦しいというイメージが根強く残っています。
しかし、今日では、がんの患者さんが感じているつらさを総合的にやわらげるケアの研究が進み、在宅、外来、入院を含め、医療の様々な場面で活用されるようになっています。このような総合的なケアのことを、『緩和ケア』(緩和医療)と呼びます。
緩和ケアを受けると、薬などのいろいろな方法で、痛みや不快感を取ったり、軽くしたりすることができます。
また、緩和ケアは、体のつらさだけを対象とするのではありません。不安や孤独感といったこころのつらさや、仕事や人間関係など、社会的な関わりの中で感じるつらさを全体的にやわらげながら、患者さんとそのご家族が自分らしく生きられるよう支援していきます。

【がんによる痛みをやわらげる方法】
がんによって起こる痛みに対して、様々な薬が用いられるようになってきています。飲み薬を基本として、貼り薬、坐薬、点滴、注射など、いろいろな薬があり、体の状態に合わせて使うことができます。
がんが原因となる痛みをやわらげる治療の基本となるのが、『WHO方式がん疼痛治療法』です。WHO方式がん疼痛治療法は、時間を決めて、痛みの強さに応じた薬を飲むことを基本とする治療法です。適切に実施すれば、8割から9割の患者さんで、がんの痛みをとることができると言われています。
がんの痛みをやわらげるために、モルヒネなどの医療用麻薬を使うこともあります。これらの薬は、担当医の指示に従って使うのであれば、安全で効果的な薬です。
痛みについて一番よくわかるのは、痛みを感じている本人です。できるだけ早く、適切に痛みをやわらげるためには、患者さん自身が、どこにどのような痛みがあるか、医師や看護師に積極的に伝えていくことが大切です。

【がんによるその他のつらさをやわらげる方法】
患者さんの体の特徴や病気の状態によって、出てくる症状は様々です。また、何か症状が現れた時、その原因は一つとは限りません。いくつかの原因が重なり、症状が出てくる場合もあります。
担当医は、症状の原因を慎重に考えて、それに合った対処方法を検討します。はっきりとした原因が特定できない場合であっても、症状を少しでもやわらげるために、様々な工夫がとられます。
また、がんが進むことで現れる体のつらさは、こころの状態や家族関係等と影響し合って、良くなったり悪くなったりすることがあります。緩和ケアでは、患者さんが感じている様々なつらさを丸ごと受けとめた上で、全体的にやわらげることが大切にされます。体のつらさをやわらげると同時に、こころのケアや社会的な支援も行います。
このような包括的なケア(全人的なケア)を実現するために、緩和ケアの現場では、たくさんのスタッフが協力しながら、チームでケアを提供します。
【緩和ケアはいつでも受けられる】
“痛みをやわらげるのは、もう治療ができなくなった時”と思われている患者さんもいるようです。しかし、緩和ケアは、診断時から終末期までいつでも受けられます。手術や抗がん剤治療など、がんを治すための治療を行っている時期でも、必要に応じて緩和ケアを受け、つらさをやわらげることが大切です。
2007年6月に策定された、がん対策推進基本計画の中にも、「がん患者及びその家族が可能な限り質の高い療養生活を送れるようにするため、治療の初期段階からの緩和ケアの実施を推進していくこと」が基本方針として明記されました。
緩和ケアを受けることは、治療を諦めることを意味するわけではありません。緩和ケアと治療は両立可能です。緩和ケアは、積極的な治療を邪魔したり、その効果を減らしてしまったりするものではありません。逆に、痛みやつらさを伴う症状を上手にやわらげることは、がんと前向きに取り組む力を持ち続けることにもつながるのです。
がんの治療を受ける時には、痛みやつらい症状があったら、いつでも率直に、医師や看護師に伝えるようにしましょう。

![]() (1)日本ホスピス緩和ケア協会 https://www.hpcj.org/index.html サイドメニューに、『ホスピス緩和ケアをご利用の方に向けた情報』があり、『ホスピス緩和ケアQ&A』(ホスピス緩和ケアに関することをQ&Aで情報提供しています)、『ホスピスってなあに?』(冊子PDF版)などホスピス緩和ケアに関する情報や、ホスピス緩和ケアの解説やホスピス緩和ケアを受けられる医療機関一覧(ホスピス緩和ケア病棟、緩和ケアチーム、在宅ホスピス緩和ケア)の情報があります。 (2)国立がん研究センター『がん情報サービス』:相談先・病院を探す https://hospdb.ganjoho.jp/ https://ganjoho.jp/public/index.html がん情報サービスの[相談先・病院を探す]では、全国のがん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院、希少がん情報公開専門病院等の一覧が掲載されていて、さまざまな条件で検索できます。 (3)緩和ケア.net https://www.kanwacare.net/ 緩和ケアに関する総論的な情報、痛みや痛み以外の症状、緩和ケアの医療費に関する情報、こころの変化やつらさへの対処法などの情報が掲載されています。 |
【つらさを抱え込まない】
がんの治療を進める間は、将来のことがはっきりと見えてこないような状況に直面することが少なくありません。そんな時には、どうしても悪い方へ悪い方へと考えてしまい、結果的に不安が膨らんでしまうかもしれません。
不安を感じ、つらい時、自分の気持ちを受け止めてくれる人、家族や何でも話せる友人に、胸の中の揺れ動く思いを聴いてもらうことは、あなたの気持ちを楽にしてくれるはずです。
一人でつらさを抱え込まないで、周囲の人に話してみましょう。
言葉として口に出されたわけではないのに、自分を心配して気遣う周囲の人々の思いが、ふと感じられた時、“一人ではない”と感じて温かい気持ちになることができるかもしれません。そんな時間がほんの少しでも気持ちを楽にしてくれると思います。
気持ちが不安定になり、病気のこと以外何も考えられない、何事にも集中できない、誰とも話したくない、眠れない、食欲がない、といった状態が何週間も続くようであれば、一度、こころの専門家(精神腫瘍科医、心療内科医、精神科医、臨床心理士、心理療法士、リエゾンナース(精神看護専門看護師)など)と話してみることも大切です。
こころの専門家をいきなり訪ねるのはちょっと敷居が高いと感じたり、どこに行けば会えるかわからなかったりする時には、まずは、担当医や、相談支援センター(よろず相談)、医療相談室の相談員に相談してみるのも良いでしょう。
あなたは一人ではありません。あなたのつらさを分かち合い、やわらげるための方法を一緒に考えてくれる人が、家族、友達、医療スタッフの中に、必ず見つかると思います。つらい時には、助けを求めてみてください。

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