【尊厳死と緩和ケアの違い】
『尊厳死』と『安楽死』について、現在も様々な論議がありますが、一般に『尊厳死』は、避けられない死が迫ってきた時に、延命を目的とする治療をやめて、穏やかに死を迎えようとすることを指して言います。他の誰かではなく、自分自身の意思と判断で死を選ぶ、という点が、『安楽死』とは異なると言われています。
医療現場で患者さんの自己決定が優先されるようになったのにあわせて、『尊厳死』や『リビング・ウィル』(患者さんが自分自身の終末期の処遇を文書で意思表示しておくこと)についても、最近盛んに議論されるようになってきました。
わが国でも、いくつかの団体が『尊厳死』や『リビング・ウィル』の普及を呼びかけています。
ただし、現在、日本では、『尊厳死』も『リビング・ウィル』も法的な基盤はなく、公的な制度として確立されていません。たとえ意思を表示しても、必ずしも尊重されるとは限らない、という点には、十分な注意が必要です。
積極的な治療が難しくなったり、治療を行うことが体やこころに負担になったりする場合でも、痛みやつらい症状をやわらげる緩和ケア(緩和医療)を受けることができます。
緩和ケアは、『死』ではなく、あなたがあなたらしさを取り戻し、最後まで『生きる』ことをサポートします。
【がんのつらさをとっていくための治療やケアはすすんでいる】
がんには、今でも『不治の病』とか『苦しい』、『痛い』という社会的なイメージが大きく残っています。
けれども、現在では、からだの苦痛だけではなく、こころのつらさ、社会的な問題によるつらさなどを含めて、総合的に、患者さんやそのご家族のつらさをやわらげるサポートが行われています。これは、『緩和ケア』、『緩和医療』と呼ばれていますが、そのためのいろいろな薬や治療法(この治療法というのは、がんを治す治療ではなく、がんによる苦痛をやわらげる治療法です)、そしてケアの方法が考えられ、また様々な専門の職種の人々が関わっています。
【気持ちが落ち着かないときは、つらい気持ちを一人で抱え込まない】
見えない先のことを考えて怖くなったとき、不安が強くとてもつらいとき、自分の気持ちを受けとめてくれる人、家族や何でも話せる友人に、不安に思っていることや揺れ動く思いを聴いてもらうことも、気持ちを楽にします。一人で、つらさを抱え込まないで、周囲の人に話してみましょう。泣いてしまってもかまいません。
また、口にしなくても、ふっと自分を心配し気遣う周囲の人々の思いが感じられたとき、一人ではないと感じて温かい気持ちになれたり、そんな時間がほんの少しでも気持ちを楽にしてくれると思います。
