悩み

より適切な治療を受けたいので、医師、病院、治療方法について悩み、資料を探すのが大変だった。



助言


【情報を入手する方法と注意点】


【まず担当医とよく相談しましょう】
がんと診断されることは、誰にとっても大変なショックです。あなたは今、やっとこころが落ち着き、どの病院、どの医師にかかればよいのか考えてみる気持ちになれたのかもしれません。

現在、医療の分野では、患者さんが自分の治療に参加する意識をもつことの大切さが言われるようになっています。病院や医師に関する情報を積極的に集めることも、医療への参加の一つの形であり、とてもよいことです。

ただ、もしあなたが自分の担当医とまだ十分に相談する時間をもてていないのであれば、まず、話し合いのための時間をきちんと作ってもらいましょう。

あなたの担当医は、現在のあなたの体や病気の状態に関する情報を、最も正確にたくさんもっています。体や病気に関する十分な情報を担当医から得てからでないと、せっかくの積極的な情報収集も、誤解や不安を引き起こしてしまうことがあります。
また、地域の病院や医師の間で、治療内容に応じた役割分担が大まかにできていることもあるので、貴重な時間の節約にもなります。
担当医は、あなたの体や病気の状態を慎重に判断し、現在かかっている病院でそのまま治療を受けることが適切である場合には、いくつかの治療方針を提案すると思います。また、もっと適切な治療を受けられる施設が地域にある場合には、そちらを紹介すると思います。
まず、あなたの担当医を信頼し、積極的に相談、質問してみてください。

【客観的な情報を確認する】
どのような医師が、あなたにとって『信頼できる医師』と言えるでしょうか。思い描くイメージは、人それぞれではないかと思います。ですが、あなたの病気の治療に必要な専門知識や技術をもっているかどうか、ということは、決め手の一つとなるでしょう。

ただ、どの病院のどの医師がそのような知識や技術をもっているのか、一般の方(医療者以外の方)にはわかりにくいものです。立派な施設をもつ病院、人当たりのよい医師が知識や技術も兼ね備えていればよいのですが、必ずしもそうとは限りません。また体や病気の状態は人によって違います。お知り合いからのクチコミで『あの病院はよかったよ』という噂を聞いたとしても、その病院があなた自身の体にとってもよい病院だという保証にはなりません。

医療機関の正確な情報を入手するには、『がん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院等』に関する情報をまず確認しましょう。『がん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院等』は、がん医療に関する様々な基準を満たし厚生労働省の指定を受けている病院です。

お住まいの地域のがん診療連携拠点病院等に関しては、『国立がん研究センター がん情報サービス』のwebサイトにある『相談先・病院を探す』のページが参考になります。病名、お住まいの地域などから、探すことができます。指定を受けた病院の基本情報以外にも、がんの診療状況、リンパ浮腫外来、ストーマ外来、遺伝性腫瘍外来などの専門外来、臨床試験の実施状況、緩和ケアの実施状況、患者さんやご家族同士の交流の場、相談支援センターなど、がん医療やケアに関する多くの情報が掲載されています。

これらのがんの拠点病院というのは、専門的ながん医療の提供、がん診療の地域連携協力体制の構築、がん患者さんやそのご家族に対する相談支援や情報提供などを行っている病院です。つまり、各都道府県のがん医療の中心となっている病院といえます。
また、お住まいの都道府県の情報は、同じく『がん情報サービス』のコンテンツの一つである『地域のがん情報』を参考にしましょう。病院だけではなく、がんの療養に関する情報などをまとめた冊子や、その都道府県のがん関連情報サイトへのリンクなども掲載されています。

【目安の一つは標準治療】
標準治療というのは、治療の効果や安全性が科学的に証明され、広く実施されている治療という意味で、関連学会の診療ガイドラインなどに基づいて行われています。
標準というと、『並』『ありきたり』という印象がありますが、それは誤解です。標準治療は、病気のある状況について、現時点で効果や安全性が最も高いことが確かめられている治療です。その意味では、標準治療こそ、最新の治療であると言うこともできます。
あなたの場合に、具体的にどのような治療が標準治療にあたるのかは、がんの位置、大きさ、細胞の性質、広がり方などによって異なります。

治療を受ける病院や医師を選ぶための一つの目安は、標準治療を受けられるかどうか、ということです。ただ、場合によっては、標準治療を踏まえた上で、担当医がさらに適切だと考える治療を提案することもあります。
担当医から治療方針を提示されたときには、その治療が標準治療にあたるのかどうか、標準治療とは異なるのであればその治療が自分に合っている理由はなぜなのか、確認してみましょう。

【病気や治療に関する情報】
病気や治療に関する情報は、『国立がん研究センター がん情報サービス』の『乳がん』に関する情報を確認してみましょう。乳がんの情報、検査や治療、療養生活に関する情報など、さまざまな情報を確認できます。
また、『日本乳癌学会』のサイトには、『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』など、患者さん向けの多くの情報が公開されています。また、日本乳癌学会認定の乳腺専門医のリストも公開されています。

ただ、乳がんの治療はがん診療連携拠点病院や乳腺専門医でなければ行っていない、というわけではありません。これらの病院や専門医の数は限られていることもあり、どうしても患者さんが集中しがちです。
また乳がんは、女性が最もかかりやすいがんの一つです。比較的体の表面に近い部分に発生すること、患者さんの数が多いことなどから、どのような治療が一番適切なのか、医学的に方針をはっきりと立てやすいタイプのがんであると言えます。
病気の状況や手術を受けるまでの待機期間を考えると、新しく病院を探すよりも、現在おかかりの病院で治療を受けた方が、医学的な観点から利益が大きいと考えられる場合もあります。

【交通の便なども検討しましょう】
あなたの病状に合った治療をきちんと受けられる、ということが、病院や医師を選ぶときの基本です。ただ、がんの場合、『手術を受ければ治療は終わり』ということではありません。一般的には、手術後も定期的に通院して、診察や検査を受けます。また、外来で抗がん薬治療や放射線治療を受けることもあります。
自宅からあまり遠い病院に通い続けることは、体も疲れますし、時間やお金もかかるので、大変です。このため、病院を選ぶ際には、通いやすさも検討するためのポイントになります。
担当医から遠方の病院で治療を受けるよう提案されたとき、もし家庭の事情などによって通院に不安がある場合には、同等の治療を受けられる病院が自宅近くにないか、また、手術などの集中的な治療が終わった後は、より近くの病院で経過をみてもらうことができないか、相談してみてください。
同じように、今おかかりの病院への通院がつらいと感じるようになった場合には、自宅の近くで適切な治療が受けられる病院を紹介してもらいましょう。

(最新更新日 2024年5月23日)


 
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