治療が終わったら -仕事や家事について -

Q.いつから仕事や家事ができるのだろうか。

家事や仕事の再開
病状や受ける治療の内容によっては、一時的に体力が落ちたり、体の機能が低下したりすることがあります。家事や仕事復帰は、担当医ともよく相談しながら決めていきましょう。できれば、最初は少しずつ始めて体を慣らしていったほうがよいでしょう。仕事復帰する場合は、仕事の内容や勤務形態の種類等により異なりますが、上司と相談しながら、徐々に体を慣らしてもよいでしょう。職場に産業保健職種(産業医や産業保健師等)がいる場合は、相談しながら復帰を考えていきましょう。

仕事に復帰する際には、大前提として、『自分の体のことは、自分で責任をもって守り、いたわる』という気構えを持っておくことが大切です。その上で、必要に応じて、周囲の理解や協力も求めていきましょう。その際には配慮を求めたいことともに、ご自身ができることも伝えていくとよいでしょう。
また、仕事内容にもよりますが、仕事復帰直後から治療前と同じように100%のペースで仕事をするのではなく、できることなら、職場の仲間や上司と相談して、仕事の量を減らしたり、軽い仕事から始めさせてもらったりしましょう。
大切なことは、無理をしないでいい範囲で、少しずつ、体とこころの両方を慣らしていくことです。
時間が経つことで、体力は少しずつ回復します。それと同時に、こころもまた、新しい状況を受けとめるための力をつけていくはずです。

周囲の人は、治療がどんな影響をもたらすのか、あなたがどのようなことに不自由を感じているのか、“教えてもらわないと分からない”のが現状です。回復途中にある時は、状況が変化するのでなおさら相手には伝わりづらく、ご自身で伝えていくことが必要になります。
協力してほしいことは、あなたから口に出すようにしてみましょう。周囲の人が負担に思うことは少なく、思いを聞くことで、あなたのことをより理解できるようになると思います。
治療後の体と社会生活の適応をはかっていく時、予想しない問題にぶつかったような気持ちをもったり、気疲れしたりすることがあるかもしれませんが、少し前のことを振り返ってみると、回復を感じられると思います。

役割について
がんと診断され治療を行っていく時間のなかで、あなたのまわりはいろいろと変化すると思います。あなたの代わりにご家族が家事やお子さんの世話をしたり、あなたの仕事を他の方が引き継いたりすることもあります。地域での役割も途中で人にかわってもらったこともあるかもしれません。
仕事や近隣との関わりが減ると、“社会の流れについていけない、取り残される”といった気持ちになることがあります。
一時的に役割を譲って、また復帰できる場合もありますし、健康状態によっては、以前より活動の範囲を狭くすることもあると思います。自分が行ってきた役割を人に譲る時、自分の存在が小さくなったように感じるかもしれません。けれども、社会生活だけでなく、家庭のなかでも生活しているので、家庭内で新しい役割ができる場合が多いと思います。ご家族が帰ってきた時に「おかえり」と迎える、夕食後にご家族のお茶をいれるということでも家族間の結びつきが再確認できると思います。
これまでに周囲の人が困っていると、放っておけないと思って手助けしたり、逆に、助けられたりと感じたことがあると思います。人はこのように、お互いに助け合い、影響し合って生きているので、存在が無意味ということはありません。
日々の生活の過ごし方を決めるのは、その人自身です。“今までできていたことができなくなった”と思うよりも“今まで気づかなかったこういうことができた”という喜びなど、プラス思考の出来事や思いを大切にし、かみしめていくことが、体とこころの底力になるのではないかと思います。

職場の人々とのコミュニケーション
職場に復帰する際、誰にどのように話すか等悩まれることも多いと思います。誰に話をするかですが、まずはプライバシーを含め信頼できる親しい人、また上司に打ち明け、相談してみてはどうでしょうか。傷病手当などの各種手続きの関係などで、事務関連部門にはある程度伝える必要がありますが、誰にどこまで話すかどうかは信頼できる親しい人や上司などと相談のうえで決めましょう。ただし業務上配慮を求めたい場合には、ある程度お話ししておいた方がよいかもしません。その際には誰に、どこまで伝えるか(病名や病状まで伝えるのか、手術後であることだけ伝えるのかなど)をあらかじめ決めておくとよいでしょう。確かに、人によって反応もさまざまだと思いますし、人の理解の仕方もさまざまです。その一方で、職場にもあなたをサポートしてくれる存在がいることは心強いといえるでしょう。
会社への連絡や仕事の調整が必要な場合は、上司には気軽に頼めなくても、親しい人であれば、協力を頼みやすいかもしれません。
今後の定期通院を続けていく上で、環境を整えていくことは大切な作業です。仕事場の環境もその一つといえるでしょう。
病名をどのように伝えるか、病状をどこまで伝えるか、治療をどのように伝えるかなど1つ1つ考えていかなければいけませんが、職場でもあなたの味方、あるいはサポートをしてくれる人は必ず必要になってくるでしょう。誰にどこまで伝えるかを考えた上で、時間をとってもらい、まずその人に相談を含めて話してみましょう。

職場というのは、家族や友人ほど、あなたとの関係が近いわけではありませんが、毎日多くの時間を過ごす場所でもあります。あなたが伝えなければわかってもらえないこともあると思います。また伝えることで、あなたのこころ、あるいはあなたの状況を理解してくれて、仕事の面からサポートしてくれる人も見つかるかもしれません。
このように考えると、体の状況等から、配慮をして欲しいと思うことに関しては、自分の口から、周囲の人に伝えて理解してもらうことが大切だと思います。

仕事を続けるか迷っている時
仕事をどうしていくかは、実生活では、生活や経済面と大きく係わります。ただ、それだけではありません。患者さんによっては、がんの治療が終わっても、自分だけが社会から取り残されたような感覚に陥ってしまうといわれる方もいらっしゃいます。仕事はある意味社会と接する機会です。仕事を続けること、仕事に復帰することが自分らしさを保つことにもつながるという方もいました。ですから、早急に結論を出さずに、時間をかけて考えていきましょう。
現実的には残念ながらあなたが仕事を続けたいと思っても、会社から「病気が治るまで休むように」と言われたり、望まない部署に配置転換になったり、リストラ、自主退職をにおわされることもあるかもしれません。
現在向き合っている自分の生活、自分の体を見据えながら、目の前にある問題を1つ1つ片付け、具体的で小さい目標を設定しながら、少しずつ事を進めていくことが大切です。
たぶん、がんと診断されてから、理不尽と思うこと、なぜ自分がという思い、働きたくても体がついていかないと感じる時などさまざまなつらさを感じておられると思います。山や谷があると思いますが、一人ですべてを考える必要はありません。できるだけ情報を集め、同時にあなたが気持ちを分かち合える人や支えてくれる人を見つけていきましょう。同じ患者さん同士、病院のソーシャルワーカー、あるいは職場に産業保健職種(産業医や産業保健師等)が配置されていれば、そういう方々もあなたのサポーターになってくれるはずです。
仕事を辞めるかどうか考える時、これまでの日々を振り返り、自分にとっても、周りの人にとっても、どのような状態がよいのか、そして仕事の意味について、改めて問い直すことでしょう。
人が何に価値を置くかは、それぞれ異なります。以前と状況が異なれば、ちがう判断を下すこともあります。

仕事復帰、退職のどちらを選んでも、以前の状況とは違う新しい生活が待っています。退職後、新たに再就職を望む場合、ハローワークとがん診療連携拠点病院が協同で退職後にがん患者が再就職を支援する取り組みも行われています。その時、その時の状況で、自分に一番合った生活を確立していくために、いろいろな人に相談してみるとよいと思います。身近な家族は体や経済面について、友人は以前と現在のあなたの考え方について、意見を言ってくれるかもしれません。仕事の負担、仕事と通院の調整という問題は、上司に相談するとよいでしょう。また、がん診療連携拠点病院等の『がん相談支援センター』や通院先の病院の『相談室』にいるソーシャルワーカーに相談してみるのも方法です。ソーシャルワーカーは、就労に関するさまざまな制度について専門的な知識を持っています。守秘義務があるため、あなたが話した内容が外にもれてしまうようなことは決してありません。いろいろと話している内に、自分がどうしたいか見えてきたり、有用な情報を入手できたりします。

解雇について
法制度上は、会社には労働者を解雇する権利(解雇権)が認められています。このため、体の状態や職場の環境によっては、たとえあなたが仕事を続けたいと希望しても、本意ではない部署に配置換えされてしまったり、解雇されてしまったりすることもあるかもしれません。
ただし、『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする』という労働基準法第18条の2の規定をはじめ、会社による解雇権の行使には一定の制限が課されています。
たとえば、一般的には、がんを含めて、『病気である』という事実そのものは、解雇の理由にはなりません。
しかしながら、病気によって、所定の業務を継続することが困難になると、解雇の合理的な理由とみなされる可能性が出てきます。ただし、その場合であっても、会社は配置転換の可能性などを検討して、解雇を避けるための努力をすべきである、という考え方が、判例によって示されています。
解雇の理由となりうる具体的な条件は、会社やあなたが結んでいる労働契約によっても変わってきます。何日以上休職すると解雇になるかなどの解雇の要件は就業規則に明記されているので、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

(更新日:2026年1月8日)
 
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